パナソニック経営刷新の後に待ち受ける大難題 楠見社長体制は計画的戦略を果たせるか

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パナソニックの津賀一宏社長(写真左)と2022年4月に発足する持ち株会社「パナソニックホールディングス」社長に昇格する楠見雄規常務執行役員(撮影:大澤 誠)
社長交代と持ち株会社体制への移行を発表したパナソニック。新体制が抱える課題は何か。前後編で解説する。

「津賀さんが楠見さんの仲人。本当かな。びっくりです」

パナソニック関係者がこう切り出した。

言うまでもなく津賀さんとは2021年6月24日付で代表権のない会長になる津賀一宏社長(64)。楠見さんとは、2021年4月に津賀氏の後任CEO(最高経営責任者)、2022年4月に発足する持ち株会社「パナソニックホールディングス」社長に昇格する楠見雄規常務執行役員(オートモーティブセグメント担当) オートモーティブ社社長(55)である(2021年6月の株主総会の決議を経て正式に決定する)。

入社早々に難題をいとも簡単に片付けた

楠見氏は京都大学大学院を修了後に入社し、直後に配属された研究所で津賀氏に出会った。サラリーマンにとって、最初に出会った先輩から受ける影響は大きく、先輩は新入社員であった頃の「生い立ち」を熟知している。それも、優秀な後輩だと強く印象に残るものだ。津賀氏は入社早々に楠見氏に難題を与えたところ、いとも簡単に片付けてしまった天才(楠見氏)に舌を巻いた。

その後、楠見氏はAV(音響・映像)機器や車載関連事業など、津賀氏と同じ土俵で闘い続けてきた。テレビ事業部長のときは、津賀氏とタッグを組みプラズマテレビ事業を終息させ、子会社化した三洋電機のテレビ事業を再構築。アプライアンス社上席副社長時代には欧州白物家電市場から撤退した。

津賀氏がアメリカの電気自動車メーカー・テスラを相手に車載(リチウムイオン)電池事業で一本足打法を続けていたが、計画どおりには収益が上がらず苦戦。同事業の安定を図るために、もう1つの大口顧客を探していた。3年前から車載電池事業を見ていた楠見氏が陣頭指揮を執りトヨタ自動車に食い込み、2020年4月、合弁会社「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ」(PPES=出資比率はトヨタ51%、パナソニック49%)を設立した。津賀氏が「現場に密着するねちっこさがある」と確信する決定打になった。

「私が選んだわけではない。指名報酬諮問委員会の総意として選んだ」と津賀氏が強調し、楠見氏も9年ぶりの社長交代について、「内示を受けたのは2週間前であり、青天の霹靂であった」とコメントしたものの、社内外で本命視されていた想定内のトップ人事である。

津賀氏からの信任が厚かったのも、兄弟分、いや親分子分のような関係であったからだ。このことは否定できない事実である。冒頭に前述した情報が流れてもむべなるかな。

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