パナソニックの経営「わかりづらさ」に募る懸念 企業文化の抜本的な改革は本当に必要なのか

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次々と改革を打ち出しているパナソニックだが(写真:Reuters)

パナソニックの津賀一宏社長は、「パナソニックの文化を変えたい」と考え、次々と改革を打ち出している。

「文化を変えたい」――。どこかで聞いたセリフである。思い起こせば、2016年にシャープが鴻海傘下になった結果、「ラストエンペラー」になった高橋興三・前社長は、就任直後の2013年頃、「シャープにはけったいな文化がある」と不満を公言。「けったいな文化を変えるために、各地の拠点を回り、飲みながら現場の人たちと居酒屋で、腹を割って話し合っています。貧乏会社ですから割り勘で……」と話していた。

最近では、2019年に日産自動車社長兼CEO(最高経営責任者)に就任した内田誠氏が「企業文化の改善」を訴えている。カルロス・ゴーン前CEO時代にたまった負の遺産を一掃し、「日産ウェイ」を確立しようと力を入れる。

このように、苦境に瀕した日本企業のトップは「文化大革命」を最優先事項にしがちである。一生懸命に改革を進めているのにうまくいかないのは、企業(組織)文化に問題がある、と考え込んでいる節がある。

「温室」からイノベーションは生まれない?

津賀社長が問題視している企業文化とは、パナソニックにいれば安泰に暮らせるだろうという、老舗型大企業に見られがちなあしき公務員にも似た安定志向である。そのような「温室」からは、イノベーションが生まれないと確信しているのであろう。そこで、津賀社長はまず、エグゼクティブ人事から手をつけた。外部から「異質の人材」をスカウトしたのだった。

パナソニックに在籍していたが出戻ってきた「辞めパナ」と呼ばれる社長・会長経験者(樋口泰行・コネクティッドソリューションズ社(CNS)社長/元日本ヒューレット・パッカード社長、元ダイエー社長、前日本マイクロソフト会長)、パナソニック担当だった元アナリスト(片山栄一・執行役員/前メリルリンチ日本証券調査部長)、海外ICT大手からスカウトした(当時)40歳のビジネス・イノベーター(馬場渉・ビジネスイノベーション本部長/前SAPバイスプレジデント)、そして、馬場氏が津賀社長に紹介し役員待遇のフェローとして招かれた「Yoky(ヨーキー)」こと松岡陽子氏(アメリカ・グーグルのスマートホーム部門「ネスト」のCTO[最高技術責任者])など、前職で輝かしい実績を持つ面々である。

津賀社長は異文化の人たちが既存の企業文化に刺激を与えることを期待している。彼らの入社をきっかけに、2018年4月から、ジーパンやスニーカーでの勤務を解禁した。明治の文明開化でちょんまげを切り捨て、散切(ざんぎ)り頭になったように、パナソニックの社員もダークスーツに社章をつけた「人民服」はまとわなくなった。津賀社長も自らオフィスカジュアルを実践している。

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