パナソニックの経営「わかりづらさ」に募る懸念 企業文化の抜本的な改革は本当に必要なのか

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コネクティッドソリューションズ社では、席が決まっていないアドレスフリーのオフィスを設け、そこへジャーナリストたちを呼びお披露目した。その後見たテレビの報道番組には、なんと、耳にピアスをした若い男性社員がインタビューに答えていた。フォーマルな服装、身なりを基本としていたかつてのパナソニックでは、周囲から白い目で見られたタイプだ。問題児も今やヒーローである。

加えて、2017年5月30日の事業方針説明会で、樋口泰行・CNS社社長が平然と口にした次の発言は、「大阪で生まれた会社」が変わる象徴として注目された。

「『門真』発想ではもう限界。すぐに東京に行くことを決めた」「大阪中心の製造事業部だと、意識や戦略を転換するには少し重たい」

このように、パナソニックが文化大革命を進める中で、社内に軋轢は生じていないのだろうか。

以前、津賀社長にインタビューしたとき、「落下傘や出戻りが優遇されるとは。会社のために私生活も犠牲にして、これまで頑張ってきた俺(私)たちは、なんだったんだ」とうがった見方をしている人も少なくないのでは、と質問すると、次のような見解を述べた。

「圧倒的に好意的な声のほうが多い」

「『俺たちはなんだったんだ』といった声は少ないです。(外部から登用したエグゼクティブたちは)社内で歓迎されています。圧倒的に好意的な声のほうが多い。右肩上がりのときは、優秀な人であったとしても、外から連れてくる人事政策に対して否定的な声が出たかもしれませんが、今では、このままだと会社が縮小していくという危機感のほうが大きい。チームプレイの中で社外から来た人の知恵と中の人の知恵を掛け合わせることで、この危機的局面をなんとか打開していきたい、という希望のほうが勝っていると思います」

ごもっともと言えばごもっともな発言である。中村邦夫・元社長は、「創業者の経営理念以外はすべて破壊する」と豪語し「破壊的創造」を実行した。その中村氏が大きな賭けに出たプラズマディスプレイ(PDP)事業を、これ以上続けていてはもたないと判断し「破壊」したのが津賀氏である。2人の共通点は「壊し屋」であることだ。

パナソニックのような100周年を超えた老舗型大企業には、蓄積された「企業の遺伝子」が現存する。その一方で、吐き出さなくてはならないウミもたまっている。このウミを吐き出すためには、並大抵の対症療法では解決できない。そこで、大手術を施さなくてならないとトップは考える。その前に、患者とみている従業員に「ガン宣告」をする必要がある。「企業文化を変えなくては」と。それでも戦略が思惑どおりに達成できなければ、「企業文化が変わっていないからだ」と不満を口にするようになる。

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