パナソニック持株会社化に透ける強烈な危機感 新社長の楠見氏は冷徹と優しさを両立できるか

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ソニーと比較する質問をすると「ソニーさんはソニーさんですから」と否定しながらも顔を紅潮させていた森下洋一元社長(故)や「ソニーさんはチャンピオン、われわれはチャレンジャーです」を口癖にしていた中村邦夫元社長の姿を思い出す。

その頃に比べると、両社の業態はかなり異なってきたが、コーポレートガバナンスという点では、津賀社長の目にも業績、時価総額で大きく水をあけられたライバル・ソニーの影がちらついていたのではないかと思わざるをえない。「最も身近な気になる企業」として意識し、参考にしたのではないだろうか。

楠見氏は「会社の形を創業者の時代に近いものに戻すのは必然」と説明している。松下幸之助氏は昭和8年(1933年)、日本企業初の事業部制を導入し、研究開発から生産、販売、会計まで一貫した独立採算制の自主責任経営を徹底させ急成長の原動力とした。楠見氏はこの組織に原点回帰しようしている。中村元社長が事業部制を廃止し大坪文雄元社長が継続、そして、津賀社長が事業部制を復活させた。今回の組織再編は、津賀路線の改良型バージョンアップと言えよう。

持ち株会社には、グループ企業の指揮監督のみを目的とする「純粋持ち株会社」と株式を保有して子会社を指揮する一方で、持ち株会社自体も事業活動を行う「事業持ち株会社」の2種類がある。パナソニックホールディングスは前者に相当する。

1997年12月に独占禁止法が改正され、それまで禁止されていた純粋持ち株会社が解禁となった。それ以降、「○○ホールディングス」「△△グループ本社」といった社名に変更する企業が相次いだ。

稼ぎ頭となる事業が見えてこない

パナソニックが今になって持ち株会社を設立する方針を固めた背景には、津賀社長が述べている通り「次の成長領域をしっかりと確立できる体制を整え、抜本的に会社の形をグループ全体の視点から見直す」という理由があったと考えられる。

これまでも組織体制をたびたび変更し、成長戦略を計画的戦略として提示してきたが、結果として稼ぎ頭となる事業が見えてこない。持ち株会社設立で新たに打ち出した4基幹事業も現在進行形の創発的戦略であり、開花しているステージにあるとは言えない。これらがうまくいかなければ、また、途中であらたな創発的戦略を考案、実行しなくてはならない。楠見氏がしっかりとした「次の成長領域」を実現できなければ、オオカミ少年になってしまう。

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