コロナ第3波「日本に決定的に足りてない対策」 無症状者への検査と院内感染への備えは不十分

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7~9月期は、コロナが猛威を振るった欧州の多くの国より、経済ダメージは大きくなっている。10月28日現在、7~9月期の経済統計が公開されていないロシア・ポーランドを除く、人口3000万人以上の欧州5カ国で、日本より経済ダメージが大きいのはイギリスとスペインだけだ。ドイツに関しては、死者数も日本と変わりない。

日本のコロナ対策費の総額は約234兆円で、GDPの42%だ。これは主要先進7カ国で最高だ。ドイツとイタリアは30%台、イギリス、フランス、カナダが20%台、アメリカが15%台だ。日本のコロナ対策の費用対効果は極めて悪い。

日本の検査体制はこのままでいいのか

何が問題か。主要なコロナ対策は、マスク、ソーシャル・ディスタンス、検査だ。

日本がマスク着用、ソーシャル・ディスタンスの点で優等生であることは改めて言うまでもない。問題は検査だ。厚労省の方針で、PCR検査数は、先進国最低のレベルに抑え込まれている。私は、この方針を貫けば第3波でさらに大きな被害を生じると考えている。

それは、第3波では、若年の無症状感染者の占める割合が高まっているからだ。彼らが職場や家庭、さらに「Go Toキャンペーン」などを介して、感染を拡大させている。

このことは世界も注目している。11月12日、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルは「新型コロナの症状観察、無症状感染者をほぼすべて見落とし=研究」という記事を掲載した。

この記事は、11月11日、アメリカの医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』オンライン版に掲載されたアメリカ海軍医学研究センターの臨床研究を紹介したものだ。

この研究の対象は、1848人の海兵隊員の新兵だ。彼らは、サウスカロライナ州のシタデル軍事大学に移動し、訓練を開始するにあたり、14日間の隔離下に置かれた。その際、到着後2日以内に1回、7日目、14日目に1回ずつ合計3回の検査を受けた。この結果、51人(3.4%)が検査陽性となった。

意外だったのは、51人すべてが定期検査で感染が確認され、46人は無症状だったことだ。残る5人も症状は軽微で、あらかじめ定められた検査を必要とするレベルには達していなかった。若年者は感染しても、無症状者が多く、有症状者を中心とした検査体制では、ほとんどの感染者を見落とす可能性が高いことを示唆している。

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