日本国内では、首相肝煎りで実施されてきたGoToトラベルの是非が議論の的となっている。新型コロナ対策分科会や医師会の提言を受けて、事業の見直しに急遽舵を切っている現状だが、世界でも新型コロナウイルスの感染拡大と国内観光の浮揚策のバランスについては、各国が試行錯誤を迫られている。
東南アジアの常夏の国マレーシアでは、このたび政府による大きな決断が下された。11月24日に1日の新規感染者数が過去最多の2188人と、初めて2000人を超えるなど感染者数が急増する中、国内観光の浮揚策として苦境に陥る旅行業界の支援を掲げる「国内トラベルバブル」、つまりは国内観光促進キャンペーンの開始を突如として発表したのだ。
マレーシアでは10月以降、加速度的にコロナウイルスの新規感染者数が増加の一途を辿っており、保健省のノール・ヒシャム事務次官は「第3波に入った」と指摘。マレーシア政府は10月14日から首都クアラルンプールなどに再び活動制限令を発動し、学校は休校、州を跨ぐ移動などを禁止してきた。過去最多の新規感染者数が更新され続けてきたこのタイミングで、政府が大胆な観光浮揚策を打ち出したのは、深刻な経済への打撃と観光業界からの苦痛の声が限界に近付いていることへの危機感の表れだ。
旅行業界に大打撃
1年を通して温暖な気候で、美しい白砂とサンゴ礁が広がり、青く輝くビーチリゾート島を有する常夏の国だけあって、観光産業の逼迫は国家が抱える喫緊の課題である。実際、マレーシアの国内観光産業が国内総生産(GDP)に占める割合は3番目に大きい約15.9%に上っており、年々増加の一途をたどってきた。
そのようななか、新型コロナウイルスの感染者数が急増して活動制限令が敷かれた今年3月以降で、少なくともホテルや旅行代理店などのべ200社以上がすでに閉鎖を余儀なくされたと言われている。そのなかには、有名なリゾート地の五つ星ホテルなども含まれており、いかにその打撃が大きいかがうかがえる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら