コロナ急拡大のマレーシアが観光を促進する訳 日本のGoToトラベルとはいったい何が違うか

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日本では、GoToトラベルが出張などのビジネス用途も含まれるのかなどが論議となり、のちに除外されることとなったが、マレーシア政府の発表によると「トラベルバブル」では観光形態は個人、家族、団体を問わず可能とされ、ビジネスなどの会議や視察、見本市なども対象に含むと細かく定義されている。のちの混乱を避けるため、当初から細かく対象を明示した形だ。また、旅行の際には国が認可した旅行代理店のパッケージツアーによる旅行が強く推奨される、とも明記されている。さらに、許可される観光活動の内容までも、細かく指示がある。

可能とされるのは以下だ。

【マレーシアの”国内トラベルバブル”で可能となる対象】
・ビジネス会議、視察、見本市など
・旅行博、文化催事
・ゴルフ
・スキューバダイビング
・登山(トレッキングも含む)
・釣り、急流下り
・洞窟体験

国民の不要な混乱を招かぬように

また、たとえ出発地が「グリーンゾーン」でも、目的地(同じくグリーンゾーン)に到着するまでの行程に、陽性患者1~20人の「イエローゾーン」、同21~40人の「オレンジゾーン」、同41人以上の「レッドゾーン」を通過する場合には、警察が発行する州をまたぐ移動の許可証申請が必要。さらに「強化された活動制限令(PKPD)」が敷かれている地域を通過することすらも禁止すると定められた。つまり、感染のホットスポットと呼ばれるエリアでは旅行が許されないどころか、旅行のための通過も禁じられると言うわけだ。

このように、マレーシアの「トラベルバブル」は、国民の不用な混乱を招かぬよう、スタート時点から細かくさまざまな規制が政府により定められているのが特徴だ。そして、感染拡大を招く引き金になることを最大限避けながら、経済とのバランスを図ることを求められる状況のなか考慮された試行錯誤の策と言える。

ちなみに、マレーシア政府は、国家の危機のために働く医療従事者やその家族に少しでも骨休みをしてもらおうという趣旨で、「フロントライナー」向け割引パッケージなどを観光復興計画として打ち出している。

「Cuti Cuti Malaysia=休日には国内観光をしよう」

今、官民ともにこのスローガンのもと動き出すなか、いわば「マレーシア版GoToトラベル」の行方はいかに――。日本のGoToトラベルをはじめ、各国政府が観光のテコ入れに試行錯誤するなか、経済とのバランスをいかに保ちながら感染拡大を抑えるか、難しい舵取りが迫られている。

“レッドゾーン”は通過すらNGとするなど、政策は緻密に練られている(筆者撮影)
海野 麻実 記者、映像ディレクター

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うんの あさみ / Asami Unno

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやYahoo!Japan、Forbesなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは、主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題、エネルギー関連など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

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