8月20日、日本感染症学会で尾身茂・新型コロナウイルス対策分化会会長が「全国的にはだいたいピークに達したとみられる」と発言した。本稿を執筆している8月22日に全国で診断された感染者数は984人、1日当たりのピークである8月7日に感染が確認された1601人の61%だ。とりあえずのピークは越えたと考えていいだろう。
ただ、私はこれでは安心できないと考えている。今回を「第2波」とした場合、現在の感染対策を続ける限り、日本は「第3波」の到来を避けられない。なぜなら、合理的な対応がとれていないからだ。それは最新のコロナ研究の成果に基づいて、対応を臨機応変に変えることだ。
コロナ研究は日進月歩だ。アメリカの医学図書館データベース(PubMed)で“COVID-19”で検索すると、8月23日現在、4万2748報の論文がヒットする。これに“Japan”という単語を組み合わせて検索してみると839報となる。全体の2.0%にすぎない。日本のコロナ研究が停滞していることがわかる。
では、最近、筆者が関心をもった研究をいくつかご紹介しよう。
抗体検査による感染者数の推定は過少評価となる
まずは軽症者のコロナ抗体の保有率についての研究だ。コロナの特徴は感染しても、無症状あるいは軽症の人が多いことだ。彼らが、どの程度存在し、周囲にどの程度感染させるかは明らかではない。最近になって実態がわかってきた。
8月19日にフランスのパスツール研究所などのチームが『サイエンス・トランスレーショナル・メディスン』誌に発表した209人の軽症患者を対象とした研究によると、発症から15日後までにコロナへの抗体が検出された人は32%にすぎなかった。
これは8月18日に中国の復旦大学の研究者が『アメリカ医師会誌(JAMA)内科版』に報告した研究とも一致する。彼らは軽症のコロナ感染から回復した175人を対象に抗体価(体の中に侵入してきた、あるウイルス<抗原>に対して対抗する物質<抗体>の力価<量や強さ>のこと)を評価したが、抗体価のレベルが患者ごとに個人差が大きく、最も閾値を下げても(抗体陽性者を最も多く見積もっても)、10人は陰性だった。さらに、抗体価は発症後10~15日でピークに達し、その後、ゆっくりと低下していった。
フランスと中国の研究成果は、抗体検査をベースとした軽症感染者数の推定は過小評価になることを意味する。
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