日本がコロナ第3波を避けられない決定的弱点 「無症状者に検査は不要」の方針は大いに疑問だ

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韓国から、このような研究が出たのは、第1波の流行当初から徹底的にPCR検査を実施し、無症状感染者を正確に把握できていたからだ。かつてMERS(中東呼吸器症候群)の流行で苦戦した経験を生かしたことになる。実は、日本にもチャンスがあった。ダイヤモンド・プリンセス号の検疫の経験だ。多くの乗客が船内で感染し、その後の経過もわかっている。日本からも感染者の状態を記述した論文は報告されているが、PCRを徹底的に行い、無症状感染者の臨床像を明らかにしたものはない。日韓の差を分けたのは、PCRの体制整備である。

コロナの研究の基盤はPCR検査だ。PCRをしないことには診断できないからだ。逆にPCR体制を充実すれば、さまざまな大学や医療機関が独自に臨床研究を進めることができる。

例えば、8月19日にカリフォルニア大学サンディエゴ校の医師たちが『JAMA』に発表した研究だ。彼らは、コロナに感染した授乳中の母親18人から母乳を採取し、PCRを実施した。17人は陰性で、陽性だった1人も、ウイルスは複製せず、感染力は低いと判断した。

彼らは授乳中の母親がコロナに感染しても、母乳を介した感染リスクは低いとの結論を出している。母親がコロナに感染しても、赤ちゃんとの接触を避け、搾乳などの形で母乳での育児を継続できることになる。母親にとって朗報だ。小さくてもいいので、患者や社会に役立つエビデンスを積み上げていくことが臨床研究だ。世界各国が力を注いでいる。

PCRが制限されている日本の問題

なぜ、日本で臨床研究が進まないか。それは、PCRが制限されているからだ。マスコミは保健所や民間検査会社の検査提供能力をもっぱら議論しているが、問題はこれだけではない。日本は公費で検査を受ける対象が制限されているのだ。

その典型例が無症状者だ。ところが、厚労省は「無症状者に検査は不要」という方針を貫いている。実は、この中に医師や看護師、介護士、さらに警察官や自衛隊員など社会的に不可欠な労働者である「エッセンシャルワーカー」や、ホームレスなどの社会的弱者が含まれる。

医師や看護師に検査を実施することは、院内感染対策の基本だし、社会的弱者に検査の機会を提供するのは、彼らを介した感染拡大予防だけでなく、基本的な人権という意味でも重要だ。このような人々に検査を制限している先進国を私は知らない。

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