関口宏「歴史を辿らねば今の自分もわからない」 あるようでなかった近現代史番組の作り方

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――番組は、1945年の終戦で終わってしまうんですか。

関口:当初はその予定でしたが、スタッフからは、1951年のサンフランシスコ平和条約まで行くべきだという声も出ています(笑)。

――関口さんが共同代表者の1人として立ち上げた「独立メディア塾」のサイトでは、終戦の特番に触れながら、記憶の風化についてコラムを書かれていました。

記憶や記録を伝え続けるのはメディアの使命

関口:今年は、終戦から75年という節目の年でした。明治維新からだと約150年です。先の戦争の記憶を直接伝えられる人は、毎年少なくなっていきます。いわんや戦前のことは、記録に頼るしかありません。

『関口宏・保阪正康の もう一度! 近現代史 明治のニッポン』(講談社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

だからこそ記憶や記録を伝え続けることは、これからのメディアの使命だと思っています。どのようにそれを伝え続ければいいのかは、難しい問題です。

ただ、コラムでも書きましたが、「教育」は非常に大切です。その意味では、『もう一度! 近現代史』も、歴史を忘れないようにする教育的な取り組みの1つかもしれません。先の戦争を深く理解するためには、そこに至った経緯を知らないといけませんから。

――番組も書籍も、中学生や高校生が日本の近現代史を学ぶのにうってつけだと思いました。

関口:ありがとうございます。番組を作りながら、今、私たちが生きているこの時代は、150年ほど前に作り変えられた明治維新の延長線上にあることを実感しています。政治も経済も生活環境も、明治時代を引き継いだ上に成り立っているものがたくさんあります。

コロナ禍で日々の生活も世界も激変しています。そんな時期だからこそ、じっくり過去と向き合いながら、現在の自分や日本を見つめ直すにはいい機会なのかもしれません。

斎藤 哲也 ライター・編集者

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さいとう てつや / Tetsuya Saito

1971年生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。ベストセラーとなった『哲学用語図鑑』など人文思想系から経済・ビジネスまで、幅広い分野の書籍の編集・構成を手がける。著書に『試験に出る哲学 「センター試験」で西洋思想に入門する』がある。TBSラジオ「文化系トークラジオLIFE」サブパーソナリティも務めている。

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