五輪125年の歴史、「デザイン」から見えた本質 資本主義、商業主義、都市文化の変遷を映す
デザインは予兆をめぐる表現の技芸
デザインは予兆をめぐる表現の技芸である。デザインは単なる記号を超えた予兆を伝えることを目指す表現である点で、予感や予想や予期をもたらすことがある。いずれにしても、未来に希望を与えられるように、人々の知覚を特別な状態にするのだ。『オリンピックデザイン全史』は全2巻1500ページ超にわたって、近代オリンピックのために駆使されてきた招致活動や本大会で用いられた各種ポスター、シンボルマーク、プログラム、メダル、ピクトグラム、入場券など、デザインという予兆の技芸を網羅的に紹介している。その網羅性たるや、驚異というほかない。
驚異の大著であるだけに、いろいろな読み方が考えられる。もちろん通読も可能だけど、やはりサンプリングして乱読するほうが楽しいだろう。自分の生まれた年のあたりのオリンピックのデザインを知るもよし、覚えている大会のロゴやデザインを懐かしむもよし、メダルに刻まれた文様を深読みするもよし、デザイナーの人となりを深掘りするもよし。もちろん手元にもう1冊、デザイン史や現代政治史などを置いて参照しながら通読してみるのも一計である。まさに多様な読み方が可能である。
各大会別にデザインされたアイテムが正確で詳細なキャプションが付されて説明されているだけでなく、コラムが折に触れて設けられて関連するデザインやアイテムが生まれた背景や経緯などが詳細に説明されている。
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