五輪125年の歴史、「デザイン」から見えた本質 資本主義、商業主義、都市文化の変遷を映す

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近代オリンピック史からはさまざまなことが読み取れる(撮影:鈴木 紳平)
コロナ禍により、史上初の開催延期となった、2020年東京オリンピック。大々的な招致活動に始まり、大会会場の選定、競技場の建設、インフラの整備、サービス業界の活況など、さまざまに紆余曲折を経て準備万端整ったなか、7月開催を目前として変更を迫られた。
近代オリンピックの発祥は、1896年に開催された、第1回アテネ大会にさかのぼる。フランスの教育者である、ピエール・ド・クーベルタン男爵の提唱によって、IOC(国際オリンピック委員会)が組織され、古代オリンピックの復興として創立された。その後125年間、全世界52カ所、52回のオリンピックが開催されてきた。
2020年12月1日、125年間のオリンピックデザインを網羅した本が発売される。その名も『オリンピックデザイン全史 1896-2020』、元文化庁長官の青柳正規氏も「誰もこれほどの規模でデザインのすごさを眺めたことはないはずだ」と称賛の声を寄せる、1560ページの大著である。オリンピックデザインから読み解く、近現代の資本主義と商業主義の変遷、メディア史とテクノロジーの成熟について、考察する。

デザインは予兆をめぐる表現の技芸

デザインは予兆をめぐる表現の技芸である。デザインは単なる記号を超えた予兆を伝えることを目指す表現である点で、予感や予想や予期をもたらすことがある。いずれにしても、未来に希望を与えられるように、人々の知覚を特別な状態にするのだ。『オリンピックデザイン全史』は全2巻1500ページ超にわたって、近代オリンピックのために駆使されてきた招致活動や本大会で用いられた各種ポスター、シンボルマーク、プログラム、メダル、ピクトグラム、入場券など、デザインという予兆の技芸を網羅的に紹介している。その網羅性たるや、驚異というほかない。

驚異の大著であるだけに、いろいろな読み方が考えられる。もちろん通読も可能だけど、やはりサンプリングして乱読するほうが楽しいだろう。自分の生まれた年のあたりのオリンピックのデザインを知るもよし、覚えている大会のロゴやデザインを懐かしむもよし、メダルに刻まれた文様を深読みするもよし、デザイナーの人となりを深掘りするもよし。もちろん手元にもう1冊、デザイン史や現代政治史などを置いて参照しながら通読してみるのも一計である。まさに多様な読み方が可能である。

各大会別にデザインされたアイテムが正確で詳細なキャプションが付されて説明されているだけでなく、コラムが折に触れて設けられて関連するデザインやアイテムが生まれた背景や経緯などが詳細に説明されている。

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