「グレタさん」は現代の「イエスかブッダ」なのか 「人類史の移行期」に生まれる価値観と倫理
彼女の提言に対し賛否両論の議論が交わされているが、この「現象」自体はどのような意味を持っているのだろうか。
このたび『人口減少社会のデザイン』を上梓した広井良典氏が、人類が拡大・成長から成熟・定常化への“移行”期にあるという歴史的視点から論じる。
「炎上」か「若者の反乱」か
スウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんの言動が世界的な注目を集めている。
二酸化炭素排出に伴う気候変動ないし地球温暖化問題を中心に据え、未来世代あるいは若者やこれから生まれてくる者たちのことを考慮しない現在の“大人”たちや政治家、支配層等々の意識・行動やその“偽善性”を容赦なく批判する内容やそのパフォーマンスが、文字どおり「賛否両論」の反応、あるいは賞賛と非難の両極の反応を引き起こしているのである。
それは世界を舞台にしたある種の“炎上”でもあり、あるいは地球環境問題を軸にした現代版“若者の反乱”という側面ももっているかもしれない。
以上、ここでの議論をグレタさんの話からまず始めたのだが、しかし本稿は彼女の主張そのものを論評することが主たる目的ではない。
そうではなく、グレタさんのような言動や主張、あるいはそれに関連するさまざまな現象が、もっと大きな歴史の流れ――いささか大げさに響くかもしれないが、人類の歴史――の中で、どのような意味をもっているかを私なりの視点から探ることが本稿の目的である。
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