「グレタさん」は現代の「イエスかブッダ」なのか 「人類史の移行期」に生まれる価値観と倫理

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私自身は、グレタさんの言動をとりたてて“礼賛”しようとする考えは有していないが、しかし彼女の主張には、それを簡単に無視したり批判したりすることでは終わらない、何か重要な意味が含まれているのではないか、という基本的なスタンスをもっている。

人類史における「拡大・成長」と「成熟・定常化」

グレタさんが体現しているような主張ないし思想を、先ほど述べたように人類全体の歴史の中に位置づけて把握するにあたり、どうしても確認しておくべき基本的な認識についてまず述べてみたい。

すなわち、人類史を大きく俯瞰すると、それは人口や経済において「拡大・成長」と「成熟・定常化」というサイクルをこれまで3回繰り返してきており、しかも、(ここが最終的に重要なポイントなのだが)拡大・成長から成熟・定常化への“移行”期において、それまでに存在しなかったような革新的な思想や観念が生成するという点だ。

これは世界人口の長期推移について先駆的な研究を行ったアメリカの生態学者ディーヴェイの仮説的な図式を示したものであり、世界人口の拡大・成長と成熟・定常化に関する3つのサイクルが見て取れる。

すなわち、第1のサイクルは私たちの祖先である現生人類(ホモ・サピエンス)が約20万年前に地球上に登場して以降の狩猟採集段階であり、第2のサイクルは約1万年前に農耕が始まって以降の拡大・成長期とその成熟であり、第3のサイクルは、近代資本主義の勃興あるいは産業革命以降ここ300~400年前後の拡大・成長期である。

この意味では、私たちは今「第三の成熟・定常化」の時代を迎える入り口あるいは移行期に立っていることになる。

ちなみに、こうした人口推計をベースに1人当たりGDPに関する一定の仮定を加えて、アメリカの経済学者のデロングが「世界GDPの超長期推移」を推計している。これはごくラフな性格のものだが、上記の3つのサイクルがおぼろげながらも示唆されている。

次ページ人口や経済の拡大・成長と定常化サイクルが起こるのはなぜ?
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