プレステ5、2つの技術革新で狙う「PS4超え」 初日販売分は完売、「圧倒的な没入感」を演出

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もう1つ、PS5の成功を占ううえで見逃せないのが、ネットワーク機能への対応だ。

PS4が販売された7年間で、ソフトのダウンロード販売やインターネット対戦は飛躍的に拡大した。PSではダウンロード販売がディスク販売を大きく上回り、全体の約6割に達するほか、オンライン対戦などに必要なPSの月額課金サービス「PSプラス」の会員数も、全世界で4590万人にのぼる(2020年9月末時点)。

【2020年11月11日15時38分追記】初出時の数値を一部修正いたします。

新型コロナ禍の巣ごもり需要もあり、PSプラスの会員数はこの1年で900万増えた。さらに、PSプラスを含めたネットワークサービスのアクティブユーザーは1億人以上になる。

サブスク型ビジネスモデルへ転換

こうしたユーザーは、PS4などの旧来のゲーム機を保有している。こうしたユーザーを囲い込むために、PS5ではPS4のゲームソフトをそのまま利用できるようにした。西野氏は「PS4のユーザーが一夜にしてPS5に移行するわけがない。ゆくゆくはPS5で遊ぼう、そんなニーズを満たしたいという点を一番優先した」と開発経緯を振り返る。

SIEの西野秀明氏は「一度入り込んだら抜けられない体験を提供したい」と意気込む(ソニー・インタラクティブエンタテイメント提供)

PS5とPS4はゲームの基本設計が似ており、技術的に困難が少なかったことも理由だが、PS4時代に作り上げたコミュニティを手放すわけにはいかなかった。優れた互換性を売りにしているマイクロソフトのXboxと同じ土俵で戦う条件がそろった。

ユーザーを囲い込めれば、継続的な課金によるサブスクリプション型の収益が期待できる。ハード売り切りからサブスク型への移行は、PSに限らずほとんどのゲーム業界で起きている現象だ。今後、クラウドゲームなどが増えた際にPSが持つユーザーコミュニティは強みになる。

PS5の浮沈はソニー全体の業績を大きく左右する。2020年3月期に全社利益の4分の1に相当する2384億円の営業利益を計上したゲーム事業は、巣ごもり需要を取り込んで2021年3月期も順調に推移している。2020年4~9月期の売上高は1兆1127億円(前年同期比22%増)、営業利益は2289億円(同64%増)だった。

新しいゲーム機の投入初期は巨額の開発費や宣伝費がかかるが、10月28日には2021年3月期の業績見通しを上方修正。売上高見通しを2兆6000億円(同31%増)、営業利益見通しを3000億円(同26%増)とした。米中摩擦などで、もう1つの稼ぎ頭である半導体事業が減速することもあって、全社利益に占めるゲーム事業の割合は4割超となる。

11月10日にはライバル・マイクロソフトのゲーム機「XboxシリーズX」が発売された。スマートフォンやパソコンなど、ゲームを楽しむプラットフォームが多様化する中、PS5のような据え置き型ゲーム機の存在感をどう打ち出すのか。PS5の成否はソニーの成長を占う上で試金石になる。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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