絵本の読み聞かせで子どもを伸ばす2つの質問 日本人のやり方は「世界の常識」とずれている

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また、「子どもとどんな絵本を読みますか?」という質問にもはっきりと違いが見られました。

アメリカでは、文字や数字、乗り物といった情報を扱う絵本、物語を読むことが多いのに対し、日本では、このようなタイプの絵本ではなく、『舌切りすずめ』や『桃太郎』といった昔話が多く読まれていることがわかります。昔話に出てくる倫理観を子どもたちに伝えたいと思っているのでしょう。

一方、アメリカの母親は絵本とことばの発達を関連づけていることがわかります。

言語教育にフォーカスした読み聞かせ手法

私は何も「アメリカはこうだから日本人もこうすべきだ」と言いたいわけではありません。アメリカ人の言語教育に対する意識が高いのは、日本語と英語の言語構造の違いに理由があります。

日本語の場合、まずひらがなを習得することになりますが、いくつかの例外はあるとしても、1つの音が1つの文字で表記されます。

それに対して、英語の場合、「a」という文字が、appleやcakeのように文字の組み合わせにより、発音が異なります。

「ABCソング」のように、一つひとつのアルファベットを読めたとしても、ひらがなの組み合わせのようにはいきません。

事実、私がアメリカで週に一度観察に訪れていた幼稚園でも、「子どもが文字を読めるようになるか」が親の関心事でした。

日本のように、本を好きになってもらいたい、豊かな感性を養いたい、といった目的が主ではなく、アメリカの親ははっきりと「ことばを教えるために絵本を読み聞かせる」という目的を持っているのです。

アメリカの親は、「きちんと教えなければ、自分の子どもが文字を読み書きできるようにならない」という危機感を切実に持っています。

だから、「勉強」として絵本の読み聞かせをするのです。

読み聞かせの目的を問うアンケート調査は、国内のさまざまな研究機関や企業が実施しています。その結果を踏まえると、回答はだいたい次の5つに集約されます。

① 親子のコミュニケーションを図るため
② 情操教育のため
③ 本好きになってもらうため/活字に慣れてもらうため
④ 集中力を養うため
⑤ 言語教育のため

実は、日本人がこれまで行ってきた読み聞かせは、①~④の理由に対する効果は期待できる反面、「⑤言語教育」、とくに、社会を生き抜くために大切なスキルである「思考力(自分で考える力)」や「読解力(文章の内容を理解する力)」「伝える力(自分の意見を言う力)」などを伸ばすことには向いていないのです。

一方、アメリカでは、子どもと対話しながら絵本の読み聞かせを行うことで「⑤言語教育」を行っており、言語教育にフォーカスした「ダイアロジック・リーディング」という読み聞かせの手法も考案されています。

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