公務員「大量クビ切り」の恐怖、社会保険庁の廃止で表面化

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 『公務員がクビになる日』を著した石田氏は「今後、国や地方自治体の組織再編や財政危機による民営化の過程で、第2の社保庁が出てこない保障はない」と指摘する。

「EU(欧州連合)のように、事業譲渡に際しての雇用保護の仕組み(TUPE法)が必要。現行の労働契約承継法を改正して、会社分割にとどまらず、合併や事業譲渡全般に際しても雇用保護を明記する一方、公務員もその対象に含むべきだ」と、EUの事情に詳しい石田氏は語る。

民主党は8月の衆議院選挙時のマニフェスト(政権公約)で、国と地方自治体を対等な関係とする「地方主権」を標榜。「中央政府の役割は外交・安全保障などに特化し、地方でできることは地方に移譲する」とうたった。

同時に「国家公務員総人件費の2割削減」の方針も明らかにしている。「特別会計、独立行政法人をゼロベースで見直す」ことにより、国の組織の廃止が相次ぐ可能性が高い。その際、クローズアップされるのが、公務員の雇用問題だ。

年金業務に関しては、社保庁廃止とともに、国が出資する公法人として日本年金機構が設立された。そして年金保険料の収納や運営管理は年金機構に引き継がれた。本来であれば、社保庁職員は年金機構に自動的に移籍するのが自然の流れだ。

ところがそうならなかった。社保庁職員は再就職に関してふるいにかけられる不安定な立場に置かれた。国鉄の民営化時と似た“採用候補者名簿方式”が用いられたためだ。

年金機構の「職員の採用基準」では、職員として採用される者は、「年金機構の理念・運営方針および人事方針に賛同する者」などが条件とされた。社保庁職員の採用に当たっては、「懲戒処分を受けた者は採用しない」との条件も盛り込まれた。

社保庁では、年金記録の「業務外閲覧」や保険料の不正免除、労働組合のヤミ専従の発覚、交通事故などさまざまな理由で懲戒処分を受けた職員がいたが、理由にかかわらず、一律に「不採用」とされた。

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