公務員「大量クビ切り」の恐怖、社会保険庁の廃止で表面化
国民感情に照らして、厳格な対応はやむをえないという見方もある。しかし、一つの事実に関して二度処分を行うことは、「一事不再理」の原則に照らして違法になるというのが法曹界での通説だ。
これに対し、厚生労働省年金局は、「懲戒処分はもともと職員としてあるまじき行為に対するもの。分限処分は組織がなくなることによって生じるもので、性質がまったく異なる。したがって二重処分には当たらない。再就職支援を通じて、分限免職の回避には最大限の努力をしてきた」と説明する。
日本弁護士連合会は08年12月に、懲戒処分歴によって一律に不採用とすることは、「労働法制および国家公務員法上でも重大な疑義がある」との意見書を発表。
意見書の取りまとめをした日弁連労働法制委員会事務局長の棗(なつめ)一郎弁護士は、「二重処分の疑いも濃く、不採用は違法性が高い」と指摘する。
懲戒処分歴ない人も免職
分限免職に納得していない元職員は少なくない。
昨年12月まで愛知県内の社会保険事務所に勤務していた國枝孝幸さん(35)は、年金記録の「業務目的外閲覧」の事実を申告しなかったことを理由に普通昇給の延期などの懲戒処分を受けた。
國枝さんはこのとき、「ある国会議員に関する年金保険料未納の報道に疑問を持ち、その確認のために閲覧したものであり、業務外とするのは不当だ」として人事院に不服審査請求をした(その後、棄却)。
当時、業務目的外閲覧に関する明確な基準がなかったこともあり、國枝さんは処分内容に納得できなかったが、「将来のためにはこれからの頑張りが重要」との説明を信じて業務に励んできたという。