オリックス、「シニア・チェアマン」の役割とは? 取締役退任を決意した宮内氏が目指すもの

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グループCEO退任を明らかにした宮内義彦氏(右)と後継の井上亮氏

オリックスを世界有数の金融グループに育て上げた宮内義彦会長兼グループCEOが、6月24日の株主総会を機に経営の一線を退く。

これにより会長は空席となる一方、井上亮社長兼グループCo-CEOが社長兼グループCEOに就任して宮内氏のポストを継承する。オリックスは33年余りも続いた宮内氏の時代から、新たな段階に入る。

次世代の経営者を育成

もっともこの人事によって、オリックスグループにおける宮内氏のプレゼンスがなくなるわけではない。

取締役を退くものの、宮内氏は新たに創設される「シニア・チェアマン」に就任。「今後は長期的に、経営を執行する立場以外の観点から、オリックスグループの企業価値の向上への助言等を行っていく」(同社のニュースリリース)。

記者会見に臨んだ宮内氏自身が「非常にわかりにくい称号」「前人未到のポジション」と煙に巻くように、シニア・チェアマンとして具体的に何をなすかは定かではない。ただ、これまで経営者の日常業務に忙殺されてできなかった「当社の長期的な方向性、戦略をじっくりと考えること」をやりたいことの第一に挙げた。「もう一つなかなかできなかったのは、井上さんの次の世代から、これはという候補者を見つけ出して育成すること」。宮内氏は「この二つを手掛けたい」と語った。

さらに、「取引先や海外のパートナーとの付き合いも深めたい」(宮内氏)。新たなポジションに就くことにより、「どれだけ会社に貢献できるかを試みる新しい時期に入る」と宮内氏は目を輝かせる。

経営の一線から退くことを「初体験」と語った宮内氏は、78歳の現在も「極めて健康」(同氏)。以前は「ぎりぎりまでトップをやるべきだという思いが強かったが、それでは無責任になりかねないと思うようになった」という。

宮内氏は、「今後は大きく包み込むように会社に貢献できれば」と語る。「生涯現役」の思いを固めているようだ。

(撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2014年5月24日号「ニュース最前線」に一部加筆)

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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