今どき流行らないが、やはり構造改革でしょう 宮内義彦・オリックス会長兼グループCEOに聞く

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みやうち・よしひこ●1935年生まれ。1960年日綿實業(現双日)入社。1964年オリエント・リース(現オリックス)入社。1970年取締役、1980年社長・グループCEO、2000年会長。2003年より現職。規制改革・民間開放推進会議議長などを歴任。(写真はロイター/アフロ)
2009年初めの「かんぽの宿」譲渡をめぐる騒動以来、メディアから遠ざかっていた財界きっての論客、宮内義彦オリックス会長が沈黙を破った。1時間超に及ぶ週刊東洋経済の独占インタビューで、混迷する経済情勢を克服するための独自ビジョンを、明快に語った──。

 

──今、企業を取り巻く環境が地殻変動を起こしています。その中で日本の国際競争力が衰えていることについて、どう考えますか。

この構造問題は二つに分けて考えないといけない。まず、企業のほうから言うと、必ずしもマイナス面ばかりではないと思う。たとえば、日本の企業は先進的な技術を豊富に有している。そして、アジアという巨大な成長市場が生まれつつある中で多様な事業展開も考えられる。各企業にとっては、フロンティアが大きくなったということだ。新しい成長戦略を描ける環境にある。

だが、それですべての問題が片付くわけではない。企業が成功してもほとんどの付加価値は海外に置いてくることになるからだ。極端な話をすれば、国内の雇用を犠牲にしながら、企業は伸びていくということになりかねない。これでは、日本が空洞化してしまう。日本国内も成長市場であることをきちんと示さないといけない。そのためには、政治の指導力が非常に重要だ。

政府はあらゆる手を打つべき

──円高とデフレの進行で、国内経済は深刻になるばかりです。

最も気になるのは、世界の先進国の中で日本だけが突出して、十数年にもわたるデフレが続いていることだ。デフレ下で経済成長するのは、至難の業。デフレという事態をもっと深刻にとらえて、政府はあらゆる手を打つべきだ。

今、流動性供給は十分に行われている、と日本銀行は言っている。そのとおりだろう。ところが、金融機関はクレジットリスクをとらず、信用供与に対して非常に慎重になっていることも事実としてある。優良企業にはお金は回るものの、それよりも信用力が劣る企業に信用供与するシステムがストップしている。これを改善し、資金が潤沢に流れるようにしないとデフレは解消できない。

もう一つは、成長戦略の構築と実行だ。政府も成長戦略を一生懸命考えているが、もっとグローバルな目線で、先進国の中でより高い成長力を達成すべきであるという発想を持たないと、きちんとした戦略は打ち出せないのではないか。

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