大京を傘下に入れるオリックスの狙い 満を持して事業投資の果実を刈り取り始めた

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大京は不動産の開発のほか、管理や流通事業も育っている

1月17日、オリックスは持分法適用会社であるマンション大手の大京を連結子会社にすると発表した。2月中にも保有する4種類の優先株、合計7859万株を3億9820万株の普通株に転換する。この転換で議決権ベースの持ち株比率は31.7%から64.1%へ上昇する。

利益面で2つの効果

子会社化でオリックスには2つの面で利益への影響が見込まれる。

1つめは2014年3月期に計上が見込まれる普通株転換に伴う評価損益だ。普通株転換時のオリックスが保有する大京株の時価総額と、現在保有する大京株(普通株、優先株の合計)の簿価との差額が評価損益となる。

優先株の転換で大京の普通株数(現在の発行済み株数は約4.4億株)は2倍近くに膨らむ見込み。優先株の転換を発表した1月17日は305円だったが、21日は276円と10%弱下げた。ただ、急落は免れており、優先株転換による潜在的希薄化のマイナス要素が相当程度、以前から株価に折り込まれていた可能性はある。

かつての普通株の取得価格や優先株の単価から簿価を推定し、2月に見込まれる子会社化時点での大京の株価が現在の270円と仮定して算出すると、評価損益は850億円程度になる。希薄化要因から値を下げて、株価が200円程度になると仮定しても、500億円弱の評価益が計上できる計算だ。株価がさらに低下すれば評価益は縮むが、プラスの影響となる可能性が大きい。

2つ目はより重要だが、大京の期間利益の取り込みが拡大すること。今期は穴吹工務店の買収に伴う特別利益があり、それを除いた大京の実力ベースの純利益水準を前期実績並みの150億円と考えれば、持ち株比率の上昇でざっくり年間50億円弱の純利益押し上げ要因となる。大京が安定的に収益を上げれば、来期以降は確実にオリックスの収益に貢献する。

子会社化する大京の位置づけ

オリックスが経営再建中の大京の支援に乗り出したのは2005年。230億円を投じて普通株約1.3億株を第三者増資で引受け、3種類の優先株(合計5000万株)も同時に200億円かけて取得した。

カネだけではなく、支援当初は大京へ社長も派遣した。そして、オリックスグループの不動産管理会社であるオリックス・ファシリティーズなどと事業提携を進めるなど、経営支援やバリューアップを行ってきた。

だが、2008年にリーマンショックが直撃したことで大きな誤算が生じた。

次ページ一時は大赤字に陥ったが……
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