今どき流行らないが、やはり構造改革でしょう 宮内義彦・オリックス会長兼グループCEOに聞く
いわゆる、下から社会を見ていくという目線、あるいは分配するという政府の発想を否定すべきことではないが、上からも横からも眺めて、全体像を頭に入れた経済政策を構築していく必要がある。
一方、供給過剰で需給ギャップが拡大しているが、そういう話になると需要は国が創出すべきだという発想になりがち。これでは過去十数年やってきたことと何ら変わらない。公共投資が子ども手当に替わっただけで、マクロ経済政策としては同じこと。そうではなく、市場メカニズムを活用し効率を高める。今どき、まったく流行らないけれど(笑)、やはり構造改革が重要でしょう。
──いかにしたら、経済成長の効率性が高められますか。
第3次産業あるいはサービス産業が、日本のGDPの65%を占めている。ところが、この分野の生産性はアメリカと比べて50~60%という低さにある。私はサービス産業の生産性を向上させれば、日本の経済は伸びると考えている。
誤解を避けるために言うと、生産性向上とは雇用を減らすことでない。新しい事業を増やすことに尽きる。たとえば、医療、介護、保育、教育という分野には、海外にあって日本にはない新産業が数多い。なぜ、日本にはないのか。さまざまな制度、規制によって進出が阻まれているからだ。規制を撤廃し、新しいサービス産業を創出すれば、新たな雇用が生み出される。やるべきことはこれしかないとすら思っている。
今は需要を止めているのだ。それではいけない。新しい、かつては抑えられていた需要を解きほぐしていく。そこに供給を増やせば、日本は何年もプラス成長ができると確信している。それでも不足する部分があれば、そこにこそ下から目線によるセーフティネットを充実させるべきだ。初めから何もなしで、下から見始めることには違和感がある。
自立と自助にこそ資本主義の精神がある
──資本主義だからこそ、効率の追求が必要だということですね。
資本主義のキーワードが、なぜ、「効率」なのか。私は、経営資源が有限だからだと思っている。これをより有効に使って、経済活動をしようというのが資本主義だ。効率性とは生産性にほかならない。そこに目線を向けないかぎり、企業は負ける。国も負けてしまう。
資本主義の精神とは何か。一人ひとりが自分の足で立つ。自立と自助、そのうえで頑張ることが大前提。そういう考え方が消えて、セーフティネットの話ばかりになれば、頑張らなくてもいいことになる。
──この局面で、経営者の心構えはどうあるべきですか。
ポジティブであるしかない。経営者の性として……(笑)。トップが「これはあかん」と思ったら、すべてダメになる。私としては、今、マーケットが広がったと思いたい。日本は世界で最も成長しているアジアのマーケットと、ほとんど競合しない。日本とアジアは補完関係にある。これは非常に有利なことだ。
当社としても当然、海外への機会を求めていく。かといって、日本を見捨てる気などは毛頭ない。日本が巨大なマーケットであることに変わりはないのだ。しかも、停滞しているサービス産業は宝の山となりうる。
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