朝ドラ「エール」凄惨な戦地の描写に透ける覚悟

天才作曲家・古関裕而を描く為に逃げられない

現在、クライマックスに向かって邁進中の連続テレビ小説「エール」。凄惨な戦地のシーンをあえて描くと決めた制作陣の覚悟に迫ります(写真:NHK)
“朝ドラ”こと連続テレビ小説「エール」(NHK総合 毎週月〜金 朝8時〜)はコロナ禍による2カ月半もの放送休止を経て再開し、現在、クライマックスに向かって邁進中だ。
昭和の天才作曲家・古関裕而をモデルにした主人公・古山裕一(窪田正孝)が戦争を乗り越えて、平和への祈りをこめた名曲「長崎の鐘」や、世界にとどろく平和の祭典のテーマ曲「オリンピック・マーチ」を作るまでになるドラマで、10月は、裕一の大きなターニングポイントとなる戦争編が放送されている。
10月12日(月)からの18週「戦場の歌」では、裕一が太平洋戦争史上、「最も無謀」と言われたインパール作戦の行われるビルマ(現ミャンマー)に慰問に向かう。そこでは、かつて裕一を音楽の道に導いた恩師・藤堂(森山直太朗)が部隊を率いていた。
ビルマのジャングルとそのなかにある部隊を再現し、激しい爆発シーンなども交え、裕一が目の当たりにする凄惨な戦場が描かれる。
戦争をそこまで描いた朝ドラはない。今回、あえて戦地を描いた理由を、制作統括の土屋勝裕チーフプロデューサーと、吉田照幸チーフディレクターに聞いた。

「裕一の戦後の生き方が決まる大事な週」

「これまでの朝ドラでは描かれなかった、朝から気が重くなるような戦場のシーンがたくさん出てきますが、こういう経験を経たからこそ、裕一の戦後の生き方が決まる大事な週だと思っています。週の最後に戦後パートの重要な人物であります池田(菊田一夫をモデルにした劇作家)が登場するということで、戦後の部分にも期待していただける回になったと思っています」。土屋さんはこう語る。

朝ドラは女性主人公が多い。そのため戦場が直接描かれることは少ない。女性は戦場で戦う男たちを見送り、空襲や疎開や国防婦人会の活動などを体験しながらその帰りを待つ。

戦場体験が描かれたのは男性主人公の「ゲゲゲの女房」(2010年)。主人公(向井理)の回想という形で戦地の苦労が描かれたのと、「ひよっこ」(2017年)で主人公(有村架純)の叔父(峯田和伸)がインパール作戦に参加したことが長台詞で語られた。

「エール」では回想ではなく、主人公が今、体験していることとして描いており、その衝撃は大きい。

この週の脚本と演出を手掛けたのは吉田照幸。「エール」のチーフ演出家である。

「戦場をどこまで描くか。古山裕一の生き方において逃げられないからやる」と吉田さんは意気込みを語った。

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