三洋のプリンスが注ぐ住宅設備革命“大河の一滴”《中国を攻める》
井植敏雅氏--祖父・歳男氏が築き上げた三洋電機を失意のうちに去った男が捲土重来の舞台に選んだのは、半生を賭した電機業界ではなく、国内では成熟産業となりつつある住宅設備業界だった。
彼を副社長執行役員として招いたのは、傘下にアルミサッシ国内首位のトステムや衛生陶器(トイレ)同2位のINAXを抱える住設大手、住生活グループだ。「住宅産業のビジネスモデルを変える」--潮田洋一郎会長の号令の下、本格的な海外市場開拓に舵を切った同社の水先案内人を任されたのが、井植副社長その人である。
「何よりポテンシャルに夢を感じたから、この会社に来た。それを一つずつ絵にして見せていくのが僕の役目」。そう語る井植氏が、住生活Gというキャンバスに思い描く住宅産業の未来予想図とはいかなる姿か。
上海で同時多発イベント アメスタ買収で反転攻勢
チベット高原に生まれた一滴の水は幾多の流れをのみ込みながら、やがて「長江」と名を変える。6300キロメートルの旅路の果て、東シナ海に注ぐその河口部に位置するのが、5月の万博開催を控え、いま世界で最も熱気を帯びている街、上海である。
その中心部、人民広場を眼下に望む高層ビルの一室で熱い議論が交わされていた。声の主は住生活Gの現地スタッフ十数人。万博開幕を約3カ月後に控えたこの日、同社が進める万博連動のイベント案も最終的な詰めの段階に入っていた。