三洋のプリンスが注ぐ住宅設備革命“大河の一滴”《中国を攻める》
しかし、販売面での中国開拓は遅々として進んでいなかった。トステムが扱う内装建材に関しては、注文があれば現地向けに細々と出荷する程度。INAXの衛生陶器は度重なる販売戦略の転換によって販売網がすさみ、高級品分野で40%近いシェアを誇るTOTOなど競合他社から大きく引き離される一ケタ台のシェアに低迷していた。
そこに思わぬ転機が訪れる。09年1月、衛生陶器の世界的大手であるアメリカンスタンダード(以下、アメスタ)のアジア太平洋部門を買わないかとの申し出があったのだ。
申し出の主は、当時アメスタの経営権を握っていたプライベートファンド。08年夏にINAXが水面下でアメスタ買収を願い出た際には、にべもなく断ってきた相手が、リーマンショックを経て、態度を180度転換させたのだった。
住生活Gは30社近いライバルに競り勝ち、09年5月アメスタ買収に成功する。買収総額は175億円。その結果、住生活Gが手に入れたいちばん大きなものは「数」だと井植氏は言う。「サニタリー関係の製品は、第一段階としてまず“普及”がある。それからどんどんアップグレードしていく。その最初のベースとなる要素が“数”なんです」。
ただ、ファンド支配下で直接販売などによる短期的利益を追求した結果、中国市場におけるアメスタのブランド価値は大きく失墜していた。まずは、その手直しが井植副社長の喫緊のハードルとなるが、彼は同時にアメスタ再生に手応えも感じている。そのキーワードこそ、潮田会長が掲げる「住宅産業の新しいビジネスモデル」だ。
「総合力」を前面に海外売上高1兆円へ
住生活Gは、幾多の“川”が合流して出来上がっている。潮田会長の父、健次郎氏が49年に興した小さな木製建具の卸売りが戦後復興の流れに乗り、住宅用アルミサッシの製造に進出する。その後もビル用サッシや厨房機器のメーカーなどを相次ぎ買収し、住設市場でのシェアを拡大。ついには01年にINAXと統合し、現在の住生活Gが生まれた。