「デジタル一辺倒」では雇用が生み出せない理由 「生命関連産業」が「ポスト・コロナ」構想の軸に

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加えて、それは冒頭で述べたAIシミュレーションが示し、またコロナ後の社会のありようの基本的方向として議論されてきている「分散型」社会という方向ともまさに共鳴するのである。

もちろん、経済の各分野は相互にすべて連関しており、こうした「生命関連産業」だけがほかと切り離されて展開していくわけではないので、これらとほかのさまざまな経済分野――製造業や各種のサービス業、観光そしてもちろん「デジタル」関連等々――とのネットワーク的連携も重要となる(デジタルとの関連については後ほど改めて述べたい)。

また、「生命関連産業」として挙げた領域は、単純な“利潤極大化”とは異なる側面、つまり相互扶助とか循環、持続可能性といったコンセプトと親和性が高い領域であり、通常の意味での「産業」という概念に収まりきらない性格をもっているだろう。

それゆえに、「生命関連産業」という言葉と並べて先ほど「生命経済」という表現を使ったのであるが、大きくいえば、それは「資本主義」の今後のありようというテーマともつながるし、また昨今議論が活発なSDGs(持続可能な開発目標)やいわゆる「ESG投資」などをめぐる話題とも接続するのである。

「情報」から「生命」へ:科学の基本コンセプトの進化

以上が、ポスト・コロナ社会における基本コンセプトとして「生命」が重要になるという際の、その経済社会に関する次元の概要であり、後ほどさらに掘り下げたいが、もう1つの側面として挙げた、科学技術に関する側面についてはどうか。

重要なポイントは、科学の基本コンセプトの進化という点にある。

すなわち、歴史を大きな視点で捉え返すと、17世紀にヨーロッパで「科学革命」が生じて以降、科学の基本コンセプトは、大きく「物質」→「エネルギー」→「情報」という形で展開し、現在はその次の「生命」に移行しつつある時代であると捉えることができる。

すなわち、17世紀の科学革命を象徴する体系としてのニュートンの古典力学は、基本的に物質ないし物体(matter)とその運動法則に関するものだった。

やがて、ニュートン力学では十分扱われていなかった熱現象や電磁気などが科学的探究の対象になり、それを説明する新たな概念としての「エネルギー」が(ドイツのヘルムホルツらによって)19世紀半ばに考案された。これは工業化の急速な進展につながるとともに、石油や電力エネルギーの大規模な使用という経済社会の変化を導いていったのである。

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