「デジタル一辺倒」では雇用が生み出せない理由 「生命関連産業」が「ポスト・コロナ」構想の軸に

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こうした問題意識を踏まえて、ここで私自身が「デジタル」の先に展望されるもの、あるいはその「内容(コンテンツ)」としても本質的な意味をもつものとして提案したいのが、以下に述べる「生命関連産業」あるいは「生命経済」というコンセプトなのである。

「生命関連産業」ないし「生命経済」というビジョン

まず一般的に、ポスト・コロナの時代においては、「生命」というコンセプトが社会の中心的な概念として重要になると私は考えている。

改めて言うまでもなく、新型コロナそれ自体がすなわち感染症であり、人の生命や健康に直接関わる現象である。また、今回のような世界規模のパンデミックが発生した背景には、同じく近年顕著な異常気象ないし気候変動もそうであるように、人間と自然あるいは生態系の間のバランスが根本的なレベルで揺らいでいるという状況が背景にあるだろう。

こうしておのずと「生命」というコンセプトが浮かび上がってくるのだが、重要な点として、この場合の「生命」とは、生命科学といった狭い意味にとどまらず、英語の「ライフ」がそうであるように、「生活、人生」といった意味を含み、また生態系や地球の生物多様性といったマクロの意味も含んでいる。

そしてこのように、これからの時代の基本コンセプトとして「生命」が重要になるというとき、それには経済社会に関する側面と、科学技術に関する側面の二者がある。ここでまず前者について述べてみよう。

端的に言えば、これからの時代には、いわば「生命関連産業」あるいは「生命経済」と呼ぶべき領域が、社会の中で大きな比重を占めるようになっていくと考えられる。

ここでいう「生命関連産業」とは、具体的には少なくとも次の5つの分野を指している。すなわち、①健康・医療、②環境(再生可能エネルギーを含む)、③生活・福祉、④農業、⑤文化であり、これらはいずれも先ほど述べた広い意味での「生命」に深く関連している。

最後の「文化」はやや意外に聞こえるかもしれないが、これはドイツのメルケル首相が、新型コロナが広がっている状況にあっても「文化」に関する活動は絶やしてはいけないとし、“文化は生命の維持に不可欠”という印象的な言葉を残したことと関わっている。

ここでポイントになるのは、以上のような「生命関連産業」は、いずれも概して比較的小規模で、「地域」に密着した“ローカル”な性格が強いという点だ。したがって、こうした分野を発展させていくことは、昨今の「地域再生」あるいは地方創生の流れとも呼応すると同時に、ローカルな経済循環や地域コミュニティーの再生に寄与するだろう。

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