「デジタル一辺倒」では雇用が生み出せない理由 「生命関連産業」が「ポスト・コロナ」構想の軸に

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ここではそうした議論を1歩進める意味で、コロナ後の社会についての、ポジティブな視点からの展望を「生命を軸とする経済ビジョン」という観点から考えてみたい。

「デジタル」一辺倒への疑問

最初に、昨今ますます活発化しているように見える「デジタル」をめぐる議論との関係について触れておこう。

改めて言うまでもなく、新たに総理となった菅義偉総理が政策の筆頭にすえているのもこの「デジタル」に関するさまざまな取り組みである。「デジタル庁」の設置構想はもちろんのこと、“地方のデジタル化”を徹底して進め、それを通じて地方創生を図るというプランも議論されている。去る9月30日には「デジタル改革関連法案準備室」が内閣官房に設置されたそうだ。

こうした「デジタル化」を前面に打ち出した政策の推進ということについて、私はそれを一概に否定するつもりはないが、しかし私自身を含め、そうした方向について次のような疑問をかすかに感じている人も実は多いのではないだろうか。

それは、デジタル化はたしかに重要だが、突き詰めればそれは「手段」であって、その内容(コンテンツ)となる産業分野、あるいはもっと広くいえば人間の営みが今後どうなっていくかという点についての、より積極的なビジョンが必要なのではないかという疑問である。

むろん、「手段」というのは言い換えれば一種の「社会インフラ」であり、デジタル化の基盤整備や推進が、さまざまな経済活動の土台となる重要な「インフラ」として機能するという点は確かなことだろう。

しかしながら、例えば道路などの社会インフラを大量に建設しても、そこを通る車や人がいなければ意味がないように――実際日本各地にはそうした道路も多い――、インフラはそれを土台として展開される経済活動ないし生産・消費に関するビジョンなしには、空疎なものになってしまうだろう。

あるいは別の疑問として、地方創生の名のもとに、日本のあらゆる地域を“スマートシティ”のような場所に変えたり、“スーパーシティ”の理念とともにひたすら「効率化」を進めていくのがはたして本当に望ましいのか、という問いも生じるのではないか。

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