ホーチミンでの環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)首席交渉官会合(日米など12カ国が参加、12~15日まで開催)が終了した。19~20日にはシンガポールでTPP閣僚会議が開催される。またまたフロマン米通商代表やら甘利TPP担当相らが、一堂に会することになるわけだが、成算はあるのだろうか。
「すきやばし次郎」会合の謎
ぶっちゃけ、オバマ大統領の立場になって考えてみると、TPPを秋の中間選挙に向けた政権の「お手柄」にするためには、夏頃までに交渉をまとめる必要がある。だが、この5月会合で大きな前進がないようなら、TPP交渉は「越年やむなし」の気配が濃厚となるだろう。文字通りここが天王山ということになる。
そこで重要になるのが、交渉参加12か国中で最も経済規模が大きい、日米二国間の交渉である。4月23~25日のオバマ大統領訪日の際には、フロマン代表と甘利大臣が2晩に及ぶ徹夜の交渉で粘ったが、結局は合意に至らなかった。が、交渉はかなり進んでいるとの観測も飛び交っており、実際に読売新聞などは「実質合意」と報じている。政府や自民党は打ち消しに躍起だが、「火のないところに煙は立たず」ともいう。
謎を解くカギは、4月のオバマ大統領訪日時のフロマン通商代表の行動にある。4月23日夜、日本に到着したオバマ大統領は、すぐに銀座の「すきやばし次郎」に向かった。これに同席したのは、スーザン・ライス補佐官とキャロライン・ケネディ駐日大使であり、対する日本側は安倍首相の側を、谷内正太郎国家安全保障局長と佐々江駐米大使が固めた。
メンツから察するに、これは安全保障政策を語るメンバーである。が、「生涯で一番うまい鮨」をつまみながら、オバマ大統領が安倍首相に迫ったのはTPP交渉での譲歩であった。ここに素朴な疑問が生じる。「だったらなぜ、その場にフロマン通商代表と甘利大臣を呼ばなかったのか」である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら