コロナ第3波が怖い人に伝えたいワクチン事情 インフルワクチン接種にも目を向けておこう

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外来診療をやっていると、「以前、インフルワクチンを接種したが、インフルに罹ってしまいました」と言われる方もいるが、これは誤解だ。そもそも、インフルワクチンはインフルの感染を完全に予防するわけではない。感染率を減らすとともに、もし感染した場合の重症度を緩和するのだ。

外来診療をしていると、このことを痛感する。インフルは普通の風邪と異なり、発熱や倦怠感などの症状が重い。外来の診療室に患者さんが入ってくれば、一目でインフル感染患者とわかることも多い。

ワクチンを打っている場合は違う。一目見ただけでは、普通の風邪と変わらないのだ。私は、冬場に風邪を疑う患者を診察する場合、必ず「インフルワクチンは打ちましたか」と聞くことにしている。接種歴がある場合、たとえ症状が軽くても、インフル検査を実施する。少なからぬ患者が陽性となる。その場合、周囲にうつさないように指導を徹底する。

効果は5カ月程度、確実に接種するには

話を戻そう。インフルワクチンは不活化ワクチンで、感染・複製力を失わせた病原体成分が投与される。このため、ワクチン接種後も免疫力は時間の経過とともに低下する。効果は5カ月程度しか続かない。受験生など、絶対に感染したくない場合には2回の接種も考慮したほうがいいのだ。

実は、我が国ではインフルワクチンの接種者が少ないことが知られている。厚生労働省の「定期の予防接種実施者数」によると、2018年度の65歳以上のインフルエンザの予防接種実施率は47.9%だ。韓国の85.1%、イギリスの72.0%、アメリカの68.7%とは比べるべくもない。

このため、政府は国民全員分のインフルワクチンは準備していない。今年は接種希望者が増えると予想されるため、厚労省は、昨年の冬より7%多い3178万本、最大で6356万人分を準備すると公表しているが、最大でも国民の半分程度ということになる。

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厚労省は定期接種の対象である高齢者や、子どもなど優先度が高い人たちに対して、早めにインフルワクチンを接種するよう呼びかける方針を明らかにしている。そして、それ以外の年齢層については、言明は避けている。これは考えものだ。持病を有する人、高齢者や乳幼児と同居している人など、法定接種の対象外であっても、是非、接種をお奨めしたい。

では、どうすればいいだろうか。例年、早い施設ではインフルワクチンは10月から接種が始まる。確実に接種するためには、職場あるいは最寄りの医師に今からお願いすることをお奨めしたい。

上 昌広 医療ガバナンス研究所理事長

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かみ まさひろ / Masahiro Kami

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

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