このように考えると、日本のコロナ対策には大きな問題があると言わざるをえない。政府や専門家は、第2波での死者が少ないことを強調するが、国民は不安なのだろう。だからこそ、経済活動が停滞する。最初からPCR検査を拡充するなど海外と同様にやっていれば、影響ははるかに少なかったかもしれない。
今後、日本はコロナ対策を強化しながら、経済活動を推し進めなければならない。ただし、冬場に向けて再び感染が広がる「第3波」が到来してもおかしくない。WHOのまとめによると、9月9日現在、35種類のワクチンが臨床試験に入っていて、このほか、145種類が前臨床の研究段階にある。
8月11日、ロシア保健省は、国立ガマレヤ研究所が開発したウイルスベクターワクチン「スプートニクV」を承認したと発表し、アメリカ疾病対策管理センター(CDC)は、各地の保健当局に対して、11月にコロナワクチンの接種を開始できるように準備するように指示している。
ロシアのワクチンに世界中から疑義集まる
しかしながら、ロシアのワクチンについては、世界中の専門家が疑義を呈している。このワクチンの臨床研究は、9月4日にイギリスの『ランセット』誌に発表されたが、イタリアなどの研究者が、偶然にしてはほぼありえない結果についての説明や、不足情報の提示を求める「コレスポンデンス」を編集長に送っているが、ロシアの研究者たちは、疑義には回答しないと表明している。
ロシア以外のワクチン開発についても、第3相試験の結果が出るまではわからない。9月にはイギリスのアストラゼネカ社が実施しているコロナワクチンの治験で、横断性脊髄炎と考えられる重大な副作用が生じ、治験が中断した。
このワクチンは、コロナウイルスがヒト細胞に侵入するのを助けるスパイクタンパク質をコードする遺伝子を、風邪の原因となるアデノウイルスに移植したものだ。強い炎症反応が生じるため、海外の治験では1日4グラムのアセトアミノフェンを併用することが推奨されていた。この薬剤の日本での常用量は成人で1.0~1.5グラムで、4グラムは最大許容量だ。高齢者や小児に処方する量ではない。これだけの解熱剤を使わなければ、接種に伴う炎症反応をコントロールできないのであれば、合併症のリスクは高いと言わざるをえない。
本稿では詳述しないが、アストラゼネカ社以外の企業が開発中のワクチンも一長一短だ。開発が進むにつれ、同様の副作用が報告されるかもしれない。
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