三神:オフィスのオーナーである企業側からはどんな要望が出ていますか。
中村:「家賃を下げたい」「スペースを効率よく使うために何ができるか」などという要求もある一方で、「縮小する中で、より社員に働きやすい環境をつくりたい」という声もあります。
狩野 史長(以下、狩野):具体的にはどんなことですか。
中村:「テレワークできる場所が欲しい」という要望がありました。当然、コロナ前はそのような場所を用意していなくて。集中できる場所はつくっていましたが、ウェブ会議をする際、ウェブ用のマイクは感度が非常に高いため、周りの音を遮れない。
狩野 :個人的な相談をする際は、周囲の人に聞かれているかもしれないと思うと、安心して話せないという声もあります。テレワーク専用の個室スペースがあれば話しやすくなるかもしれません。
人の動き方1つで会社は変わってくる
中村:従来の会議室とは違う1人用のブースが欲しいという要望があり、試しに自社で作ってみたのですが、実は大失敗しまして。
三神:大失敗?
中村:プロとしては非常に恥ずかしいのですが、暗くなり閉鎖感が生まれ、ウェブ会議すると自分の顔が暗い。次にしっかり生かしていきます。
三神:ある大企業が社長室そのものを取り払ってしまい、社長がしょっちゅう動き回ることをした結果、社員とのコミュニケーションが取りやすくなり、アイデアが通りやすくなったそうです。組織図や人事制度を変えてしまうぐらい、人の動き方1つで、会社は変わってきます。
中村:“リモート”という働き方もあれば、オフィスとは別の場所に小規模なスペースを設ける“サテライトオフィス”という働き方を導入する会社も出てきています。
狩野 :支社のようなもの?
中村:支社ではなく、場所を提供されています。カフェが会社の外に1つあるようなイメージです。
狩野 :ヴィスが取引先の社員525人を対象に、「今後のオフィスのあり方について」アンケートを行ったところ、「今よりもよりよいものにしたい」という回答がいちばん多くなったそうですね。逆に最も少なかったのが、「オフィスは不要になる」という意見です。
中村:このアンケートは4月の後半に実施しました。それぞれが在宅ワークをしているなか、たまに行く会社がコミュニケーションを生む場であるということを実感された結果だと考えます。