コロナ危機が促す反グローバル化と国内回帰

内需重視や労働分配率向上へITの活用を

WHOは国際協調を実現できず、信頼感も得られていない(写真:REUTERS/Denis Balibouse)

昨年末に中国でその存在が問題となってから、新型コロナウイルスは3カ月程度で世界中に拡散してしまった。感染拡大の背景にはグローバリゼーションがある。イタリアに続き域内各国が感染爆発に見舞われたEU(欧州連合)は、まさにグローバリゼーションの実験場だった。モノ・サービス、資本ばかりでなく、シェンゲン協定によって国境での出入国審査なしに人が移動できる。これが感染拡大の一因ともなっただろう。

言論人や有識者の多くがコロナ危機に対抗するうえで、国際協力の重要性を説いている。人がグローバルに活動する現代社会では、ウイルスを国境で阻むことはできないため、ウイルスとの闘いには世界が連帯して協力すべきだという主張だ。

『サピエンス全史』などの著書で知られるユヴァル・ノア・ハラリ氏は『TIME』誌への緊急寄稿で「もしこの感染症の大流行が人間の間の不和と不信を募らせるなら、それはこのウイルスにとって最大の勝利となるだろう。人間どうしが争えば、ウイルスは倍増する。対照的に、もしこの大流行からより緊密な国際協力が生じれば、それは新型コロナウイルスに対する勝利だけではなく、将来現れるあらゆる病原体に対しての勝利ともなることだろう」と書いた(河出書房新社の「Web河出」で全文を読むことができる)。

グローバリゼーションの反動が起きる

だが、現実に起きていることは国際協力ではなく国家間の対立だ。4月9日には新型コロナウイルスへの対応をめぐって国連安全保障理事会が開催されたものの、「中国発のウイルス」であると主張するアメリカに中国が反発し、何らの合意文書も出されなかった。

こうした状況だからこそ、国際協力の必要性が危機感をもって叫ばれているのだろう。世界中で国境の封鎖が広がり、感染爆発に見舞われた地域では都市間の往来を制限するロックダウンが展開され、外交活動も著しく縮小した。

ダニ・ロドリック教授はかねて『グローバリゼーション・パラドクス』などの著書で、「政治的トリレンマ」として、「グローバリゼーション」と「国家主権」「民主主義」を同時に追求することはできず、「グローバリゼーション」をある程度制限して「国家主権」と「民主主義」を守ったほうがよい、と主張してきた。

現実に即して世界の人々はこちらの方向に動き始めているようにみえる。グローバリゼーションはもっぱら経済活動で進んだものであり、政治的・法的には国家との社会契約の下で生活しているからだ。

ロドリック教授は、今回のコロナ危機について、ハーバード大学の自身のホームページで、「エピデミック(感染症の流行)対策として、WHO(世界保健機関)がSARSに対応して修正した国際保健規制は、アメリカを含む196カ国が法的拘束力を受けるはずのものであるのに、無視されている。国際的な協力関係の構築に失敗した」と指摘している。

実際にWHOのテドロス事務局長の発言は、各国の統計や医学的研究の成果を後追いして迷走を続けており、これは世界の人々の目に明らかとなってしまった。

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