中国国家統計局が4月17日に発表した2020年1~3月期の経済成長率は、前年同期比で6.8%減と、四半期ベースの統計が残る1992年以降で初めてのマイナスとなった。1月23日から4月7日まで湖北省武漢市を封鎖するなど、新型コロナウイルスの感染防止のために経済活動が長期にわたってストップした結果だ。
マイナス成長自体に大きなサプライズはない。中国の独立系経済メディアである『財新』が4月13日に中国内外の投資銀行やシンクタンクの予想をまとめたところ、平均で前年同期比6.6%減、中央値で同7%減という結果だった。
むしろ重要なのはその内訳、特に1~2月に比べて、3月のデータがどれだけ改善しているかだ。結論からいえば、生産の改善は市場の想定を上回ったが、消費の出遅れ感が強い。新型コロナは供給ショックと需要ショックを中国に同時にもたらしたが、前者が薄らいでも後者はまだ尾を引いている状態だ。
「公約達成」への言及が消える
さらにいえば、本当に注目すべきは足元の数字よりも、今後の政策の方向性を中国政府がどう示唆するかであった。その点で、発表記者会見では興味深い変化が見られた。
3月16日に開かれた1~2月の主要経済指標の発表会見で、国家統計局のスポークスマンである毛盛勇・国民経済総合統計司長は「今年の目標を達成する自信は変わらない」と述べた。この発言は、2020年の成長率目標は5.6%を超える水準で設定されることを意味すると受け止められた。
中国共産党は国民への公約である「小康社会(ややゆとりある社会)」実現のため、2020年のGDP(国内総生産)を2010年の2倍にする目標を掲げている。2021年の中国共産党創立100周年を祝う事業の一環だが、その達成には今年の成長率を5.6%以上にする必要があるのだ。
3月27日に開かれた中国共産党中央政治局会議でも、「通年の経済・社会発展の目標を達成するよう努力し、全面的な小康社会を実現する」と打ち出した。
ところが、4月17日の2時間余り続いた記者会見で、毛氏はこの表現を1度も使わなかったのだ。
質疑応答では、英フィナンシャルタイムズ紙の記者から「第1四半期の経済悪化は、2020年にGDPを2010年の2倍にする目標に影響しないのか」との質問が出たが、毛氏の回答は貧困撲滅など「小康社会」に関する抽象論にとどまった。
足元の経済状況を踏まえ、「GDP倍増目標を達成するために無理をするのは避ける」というコンセンサスが党内でできあがったのではないかと思われる。
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