コロナ直撃の中国が「GDP倍増」公約を断念か 1~3月に続き通年でもマイナス成長のリスク

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中国では春節(旧正月)の長期休暇の時期が毎年変わるため、経済指標も1月と2月をまとめて発表する慣例がある。1~2月の主要指標は、工業生産が前年同月比13.5%減、消費動向を示す「社会消費品小売総額」が同20.5%減、固定資産投資が24.5%減、ドル建て輸出が17.2%減と、軒並み統計開始以来最悪の水準だった。

消費では3月に悪化した分野も

3月の数値について、財新のまとめた予想と実績の乖離がもっとも大きかったのは社会消費品小売総額だ。予想の平均が8.8%減、中央値が8.5%減だったところ、実績は19.0%減だった。

1~2月に37.0%だった自動車の減少率は18.1%減までマイナス幅を縮めたが、家電は3月も29.7%減(1~2月は30.0%減)と低水準のまま。アパレルの34.8%減(同30.9%減)、外食の46.8%減(同43.1%)などは、マイナス幅が広がっている。消費者心理の冷え込みはかなり厳しいようだ。こうした分野が低迷したままだと、ショッピングセンター建設などの不動産投資にも波及してしまう。

国家統計局の毛氏は「電子商取引、オンライン学習、遠隔問診などが好調だ。実物商品のオンライン小売額は3月に5.9%増加し、社会消費品の小売総額に占める割合は23.6%で、前年同期より5.4ポイント上昇した」と話すが、こうした「巣ごもり消費」だけでは、全体の押し上げには限界がある。

浙江省、江蘇省など一部の地域では、地方政府が消費拡大のために住民に商品券の配布を実施した。こうした消費振興策の効果も注目されるところだ。

消費の悪化ぶりに比べると、投資は想定内の動きだった。財新がまとめた予想が平均で14.7%減、中央値で16%減だった固定資産投資(1~3月の累計)の実績は16.1%減(1~2月累計は24.5%減)。内訳はインフラ投資が19.7%減(同30.3%減)、製造業投資が25.2%減(同31.5%減)、不動産開発投資が7.7%減(同16.3%減)だった。中国では5GやAIに関連する「新型インフラ建設」をめぐる議論が盛んだが、いまのところ統計上にはっきり出るほどの動きはないようだ。

3月の工業生産については、財新のまとめが平均でマイナス6.5%、中央値がマイナス5%だったところ、実績は1.1%減だった。1~2月の13.5%減から劇的な回復ぶりだ。

前年同期比でプラスに転じた分野には、0.5%増の鉄道・船舶・航空(1~2月は前年同期比28.2%減)、9.9%増のコンピュータ・通信(同13.8%減)などがある。減少幅が縮まった分野としては、5.5%減の化学原料・化学製品(同12.3%)、22.4%減の自動車製造(同31.8%減)、0.4%減の電機(同24.7%減)などが挙げられる。ただし、輸出がふるわないなかで、生産回復の勢いを活かすためには内需の振興が不可欠だろう。

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