アメリカで高まる「株主至上主義」の反省機運

自社株買い禁止がコロナ危機支援策の条件に

米ボーイング社敷地内で駐機している737MAX。同型機の事故後の対応で、ボーイング社は苦境にさらされている(写真:REUTERS/Lindsey Wasson)

株主と企業の関係は根本的に変わるのか――。新型コロナショックを機に、「株主至上主義」の総本山であるアメリカでその反省機運が高まっている。やり玉に上がっているのが、自社株買いや配当を通じた過度の株主還元だ。自社株買いで株式を消却すれば1株当たり利益が増え、配当も奮発して株価が上昇すれば経営者の報酬も上がる、という構図が修正を迫られている。

政府支援に株主還元禁止の「条件」

3月27日にドナルド・トランプ米大統領が署名して成立した「コロナウイルス支援・救済・経済保障(CARES)法」。感染封じ込め策で打撃を受けた個人や法人を支援するための総額2.2兆ドルに上る緊急経済対策で、大企業と地方政府向けに5000億ドルの融資・融資保証枠が盛り込まれた。主な対象としてはエアライン業界のほか「安全保障上重要な企業」が入るが、これは明らかに航空機大手のボーイングを念頭に置いたもの。同社は3月17日、政府に支援を要請していた。

しかし、大企業への政府支援には特別な「条件」が付いた。融資の返済から1年後までは、自社株買いと配当の実施が禁止され、高額な経営陣の報酬も制限されたのだ。条件設定を強く要求したのが、米議会民主党である。「エアライン会社などが資金不足に陥った原因の1つは、自社株買いに巨額の資金をつぎ込んできたからだ」。民主党上院トップのチャック・シューマー院内総務はそう非難した。大統領候補だったエリザベス・ウォーレン上院議員は、支援対象企業の自社株買い“永久禁止”を要求したほどだ。

2020年は大統領選と連邦議会選を秋に控えており、税金を使った大企業救済に対する国民の反発を意識して、自社株買いに肯定的だった与党・共和党も妥協せざるを得なかった。トランプ氏も、「救済資金が自社株買いや経営者のボーナスに使われることは望まない。従業員のために使われるべきだ」と記者会見で強調している。

もちろん、新型コロナ危機は想定外の不可抗力であり、特にエアラインやホテル業界などは政府の移動制限措置によって需要が瞬間蒸発してしまった。エアライン業界の苦境は、アメリカ最大の輸出企業であるボーイングとそのサプライヤーにも連鎖する。そのため政府支援はやむなしという見方が多い。

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