――アメリカの2兆ドル対策や金融政策をどう評価しますか。
金融政策も財政政策も思い切ったもので、やれる対策は総動員している。ただ、職を失った人や営業できなくなった店など、本当に必要なところへどれだけ資金が供給されるかが重要で、一定の時間がかかるだろう。感染拡大で行政の現場も大変な状況にあり、必要なところへお金を行き渡らせるための行政の手続きなど、きめ細かい対応は難しい。
FRBによる「無制限の量的緩和」は、国債と住宅ローン担保証券(MBS)を上限なしで必要な量だけ買い入れるとする緊急措置だが、リーマンショック時と違うのは、これまでの長期間の金融緩和で国債金利が低水準にあることだ。買い入れによる金利の下げ余地という意味では効果は薄い。
ただ、今のアメリカでは投資家が非常に動揺しており、巨大な国債市場でさえ流動性が失われている。マーケットメーカーなど国債を売買する人たちがすごく減ってしまい、金利が跳ねやすくなっている。不安感で投資家がお金を出そうとしないためだ。その不安定な国債市場に中央銀行が介入し、いつでも流動性を供給するといえば、投資家は安心する。その安心感が大事だった。
2兆ドル対策でも足りなくなるリスク
今回の危機は根本的にリーマンショックとは異なる。2008年のリーマンショックのときは、サブプライムローン(信用度の低い借り手向けの住宅ローン)とそれを担保にした複雑な証券化商品がバブル崩壊の震源となったが、2006年ごろから地価が下落に転じるなど時間をかけて金融バブルが崩壊していた。
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