コロナ危機、日米欧「総動員」の政策で防げるか

元日銀審議委員の白井さゆり慶大教授に聞く

しかもレバレッジドローンの場合、借り手の財務健全性の確保を条件とする財務制限条項(コベナンツ)があるが、それがどんどん緩くなっていた。「コベナンツライト」といわれるものだ。このローンのマーケットがコロナショックを機に急落に転じた。日本の金融機関の投資は比較的リスクの低いトランシェ(商品区分)が中心だが、問題が長引けば影響は及ぶ。

2つ目のバブルが株式で、企業収益対比(例えばPERなど)で高すぎる水準にあった。企業がトランプ減税で浮いたお金を自社株買いに充てるなどして株価が吊り上がっていたため、何らかのきっかけで下がるといわれていた。

そして3つ目が商業用不動産。オフィスビルやホテル、ショッピングセンターなどの商業用不動産の価格がアメリカ全土で異常に高騰していた。農地も含めてだ。開発したデベロッパーの借金返済原資はレント(賃貸料)だが、レントに比べて物件価格が上がりすぎており、景気悪化で賃借人がレントを払えなくなったら一気に不良債権化するのは目に見えていた。

問題が長期化すれば金融危機へ進展も

すでにハイイールド債やレバレッジドローンの金利が高騰し、これらの債務者はお金を借りられなくなっている。問題が長引けば、商業不動産のデベロッパーも借金返済ができなくなって焦げつく。そうなると金融危機を招きかねず非常に危ない。

こうしたリスクが大きすぎるので、FRBはCPの買い入れや、ディーラーへの資金支援(国債入札に参加するプライマリー・ディーラー向けに社債やCPを担保に資金提供する仕組み=PDCF)を再開したほか、地方債や商業用不動産担保付き証券(CMBS)の買い入れ、さらには社債購入にも踏み込んで、リスク拡大を必死に食い止めようとしている。ただし、社債はトリプルB格以上の投資適格社債に限定している。

――ハイイールド債の企業は救えませんか。

アメリカ中央銀行(FED)が直接支援するのはあくまで存続可能性の高い発行体に限定され、ハイイールド債を買うというのはありえない。ただ、ほかの市場でいろいろな支援をすれば間接的にハイイールド債市場も落ち着かせることはできる。また、政治的な問題から一部は財政支援の対象となるだろう。原油価格が暴落したシェールオイル業界では、格付けの低い企業への政府による特別支援が行われるかもしれない。

――ボーイングやGEを含めトリプルB格の企業もダブルB格以下のジャンク(投機的水準)に転落する懸念が高まっています。

だからアメリカの政府や中央銀行はトリプルB格の企業を支援しようとしているのではないか。トリプルB格は発行も増えており、怖いというのは以前から言われていて、何かが起きれば問題が大きくなると見られていた。あとは、どれだけ感染拡大や景気悪化が長期化するかだ。

中国のように感染が峠を越えれば、封じ込め策も緩和され、だんだん経済活動が回復してくるはずだ。今のところ4~6月期に徐々に収束に向かうとの見方が多い。そうすれば景気は7~9月期に反発へ転じ、金融市場も落ち着きを取り戻す。ただ、ハイイールド債などのハイリスクの市場に資金がすぐに戻るかというと、今回リスクが再認識されたので、V字回復とはいかないだろう。

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