コロナ危機、日米欧「総動員」の政策で防げるか

元日銀審議委員の白井さゆり慶大教授に聞く

――欧州の状況はどう見ていますか。

とくに医療崩壊が指摘されるイタリアが厳しい。同国はもともと先進国の割にはインフォーマルセクター(経済活動が捕捉できない非公式部門)が大きく、税金を払っていない低所得層が多いので、医療体制が広く行き渡っていないと見られる。

ドイツも他国と国境を接しているため感染が広がっているが、死者数はイタリアに比べて少なく、これは医療体制の違いだろう。医療体制という意味では、東南アジアやアフリカなども公式の感染者数は少ないが、実態がどうなのかが懸念される。

ECBは、金融政策としてすさまじい対応を見せた。アメリカの次にすごいものだ。国債や社債などの資産の買い入れも年末まで大胆に行っており、ついにギリシャ国債の買い入れも始めた。財政基盤の脆弱な国の国債を、各国のEU(欧州連合)への出資比率も無視して大量に買っている。一時急騰していたイタリアやギリシャの国債利回りもECBの買いで落ち着いてきている。

ECBはTLTRO(貸出条件付き長期資金供給オペレーション)も強化している。ECBが銀行に対して最優遇の場合でマイナス0.75%の金利で長期資金を供給するもので、いわば「補助金付き」の貸し付けだ。貸出残高が増加しなくても、維持しさえすればいいという形に条件を緩和した。相当思い切った策だ。これで銀行は貸し出しの利ザヤを改善することができる。

欧州では、昨年から米中貿易摩擦の影響などでドイツをはじめ経済が減速していた。そこにコロナショックが起きたので打撃は大きい。欧州委員会も、財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に収め、公的債務残高をGDPの60%以内に収めるという財政規律のルールを緩め、各国の積極的な財政出動を認めている。

問題は、その財政規律を今後どこまで緩めるか。リーマンショック後もEUは当初、財政出動を積極化したが、財政規律が制約となってその後はECBに頼りすぎたと批判された。今回も各国が積極財政で結束できるか不透明な部分は残る。

日銀も「補助金」付きの資金供給か

――安倍政権は補正予算でリーマンショック時を上回る規模の経済対策をまとめる方針を発表しました。

優先すべきは、打撃が大きい中小企業への支援(債務保証、無担保・無利子融資)、雇用助成金の拡充、所得を失った人々への現金給付だろう。現金給付については、世帯当たりの最低生活費を保障すべく、月10万~20万円程度の支給が当面必要になるのではないか。

ただし、政府・役所なども感染の広まりで十分申請者の必要性をチェックする体制はできないとみられ、そうなると生活に困窮する人々も多くなる。そのため、まずは昨年の世帯主の収入状況や雇用状況などから判断して支給を急ぎ、事後的に支給の妥当性チェックをするといった柔軟な対応が必要になるのではないか。

――3月16日に日銀が決定した金融緩和政策についてはどう評価しますか。

企業金融支援のため、民間企業債務を担保とした最長1年の資金を金利ゼロ%で供給する新たなオペを導入したが、私はマイナス金利でやるのではないかと思っていた。日銀自身のバランスシート悪化に対する配慮があったのかもしれない。今度追加で緩和が必要になったときには、ECBのように金利をマイナスにして、「補助金」を付けて銀行に貸し出すのではないか。

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