コロナ危機が促す反グローバル化と国内回帰 内需重視や労働分配率向上へITの活用を

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振り返ると、リーマンショック後も「反グローバリゼーション」の雰囲気が広がった。

グローバルな経済活動のツケとして、世界がバブル崩壊による金融危機に見舞われたが、その後始末である不良債権処理は、それぞれの国家の財政負担、つまりは各国民の税負担によって行われたからだ。それがグローバリゼーションへの批判につながり、同時に、グローバリゼーションで利益を得た資本家や高額報酬を得た金融機関の経営トップも糾弾された。

グローバリゼーションの実験場である、EUと通貨ユーロは再び解体の危機を迎えそうだ。EUの出発点は不戦の誓いであり、原点は政治同盟ともされていた。しかし実際には経済の効率性ばかりが求められ、その矛盾点はリーマンショック後に、財政が大きく悪化した南欧の国々の債務危機という形で噴出した。

とくに統合通貨ユーロは大きな欠陥を持っていた。ドイツの強い競争力に比して、ユーロはつねに割安で、輸出に有利に働く。だが、その利益を調整する財政統合は実現できていない。

今回も同じことの繰り返しだ。4月9日のユーロ圏財務相会合は、ESM(欧州安定メカニズム)の信用枠活用や、第2次世界大戦後のマーシャルプランのような復興のための資金援助枠の準備作業を行うことで合意した。だが、復興基金の財源をめぐる加盟国間の溝は埋まらず、共通で発行する通称「コロナ債」には、これまでどおりドイツやオランダなどが反対した。

第一生命経済研究所の田中理・主席エコノミストは「結局、丸2日議論しても新たな重要な決定はできず、『一部の国が共同債の発行を主張している』といった曖昧な表現に終わった」と話す。EU首脳や域内各国首脳の口にする「連帯」はかけ声倒れだ。

金融・財政拡張は万能ではないとわかる

一方、今回の危機とリーマンショックには大きな違いがある。リーマンショックは金融危機に伴う景気後退だったので、日米欧の金融緩和と中国の4兆元に代表される各国の財政出動が効果を発揮した。需要喚起策が落ち込んだ景気を回復させ、雇用を大きく改善させた。このことは、再び企業がグローバル化を進める原動力になったし、人々の格差拡大への不満も多少は和らげてきた。

ところが、今回はまったく別種の危機で、経済活動を人為的に止めているため、金融・財政政策は効果が限定的だ。本来であれば、コロナ終息後にこうした政策の効果が望まれる。だが、リーマンショック後の10年間、日米欧がそろって金融緩和をだらだらと長期にわたって続けてきた結果、手段や効果が尽きてきていること、日本など一部の国は財政にも余裕がないことに、人々は不安を持っている。

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