金融機関で学んだ「商売の厳しさ」
三宅:田中社長は日本のアイウエア市場を刷新した「JINS」の創業者で、すでに有名人です。今さらですが、出身はどちらですか。
田中:群馬県で生まれて、野原を駆け回っていた野生児でした。
三宅:どちらかと言うと、やんちゃ坊主?
田中:やんちゃでしたね。やんちゃ坊主がこの先、身を立てるには、学問ではどうも難しそうだから「俺は商売をしよう」と高校生のときに決めました。
だから将来、起業したとき多少役立つだろうと思い、金融機関に就職したのです。その後、いろいろ紆余曲折がありつつも転職をして、ビジネスのリアリティをつかみ、転職から1年で起業しました。
三宅:いつかは起業するから、まずはおカネの借り方を知っておこう、うまくいけばネットワークも作れるし、ということですか。随分と戦略的ですね。
田中:経営とはどういうことなのか、金融機関に入れば、いちばんよくわかるだろうと思っていましたね。
三宅:金融機関の勤務で、学んだことは何ですか。
田中:4年半くらい在籍しましたが、「商売は厳しい」ということを学びました。当時は事業に失敗した人の末路は、夜逃げか自殺するしかなかったのです。
今からもう25年前のことですが、おカネを借りるには連帯保証人が必要でしたから、だいたい皆さん、親兄弟や親戚、知人に連帯保証人のハンコを押してもらわなければならない。そしていったん連帯保証人の印を押すと、連帯保証人になった人は、最初に借りた金額にかかわらず、借金返済の義務がずっとついて回るのです。「俺は300万円の借り入れの保証はしたけれど、それ以上の保証をした覚えはないよ」と言っても、包括的に保証する契約書に判を押しているので、自分が3000万円、5000万円の借金を背負ったのと同じことになるわけです。
そうするとまじめな経営者は、責任を感じて自殺してしまう。私が勤めていたときも追い込まれてしまった方が数人いらっしゃいました。そのような「商売の厳しさ」を知ることができたのが、いちばん大きかったです。
三宅:「もう起業なんてよそうかな」とは思いませんでしたか。
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