子どもの「成長痛」を放置してはいけない理由 スポーツのやりすぎには気をつける必要がある

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1つ目は、軟骨がはがれたことにより膝蓋骨(しつがいこつ)が上に上がってしまう「膝蓋骨高位」です。この病態になると膝関節の変形をきたし、「変形性膝関節症」が起こるリスクが高くなります。

もう1つは、成長期終了後にはがれた軟骨の一部が残って痛みが慢性化する「遺残性オスグッド病」です。日常生活にも支障をきたす場合、大人になってから遊離小骨片を摘出する手術を行うことがあります。この手術では、骨片を腱から丁寧にはがしながら取り出し、痛みを改善します。

 オスグッド病の予防のためには、日頃から大腿四頭筋のストレッチを徹底して柔軟性を高めることを心がけましょう。また、くつ底のクッション性がよいシューズを選ぶこと、硬いアスファルト面の走行を減らすことも必要です。ストレッチで症状が軽快しないときは、スポーツドクターのいる整形外科を早めに受診するとよいでしょう。

以上、オスグッド病について説明してきましたが、そのほかにも成長期にみられる骨端軟骨の障害がいくつかあります。

できるだけ早期に発見しストレッチで再発防止を

例えば、かかとに生じる「シーバー病」は10歳前後の男児に多くみられるスポーツ障害です。「踵骨(しょうこつ)骨端症」とも呼ばれ、かかとの骨の端骨がはがれたり、成長軟骨に炎症が起こったりしている状態です。症状として、かかとの圧痛、歩行時痛が表れ、つま先歩きになることもあります。治療は保存療法が中心で、痛みがあるときは運動を制限します。シーバー病の予防には、アキレス腱のストレッチが重要です。

また、野球少年が投球をしすぎることによって起こる外側型の野球ひじ、「離断性骨軟骨炎」もしばしば問題となります。投球などによる負荷がひじに繰り返し加わることによってまず骨が損傷しますが、それに続いて軟骨の損傷が起こります。軟骨がはがれる前に発見できれば、投球の中止と保存療法で治る可能性が高いです。

しかし、進行して軟骨がはがれれば手術が必要です。ひじの痛みがあるときは、重症にならないうちに早期に専門医の診断・治療を受けましょう。投球数の制限や、ひじに負担がかからない投球フォームで投げることが予防につながります。

成長期のスポーツ障害について、将来にも影響が及びうる問題であることがおわかりいただけたでしょうか。子どもも親も、早く練習や試合に復帰したい、させたいと思いがちですが、焦りは禁物です。できるだけ軽症のうちに発見して安静を心がけるようにし、ストレッチを徹底して予防や再発防止を目指しましょう。

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