おとぎ話をベースにした脚色がトレンド
このところハリウッドでは、誰もがよく知るおとぎ話や童話をベースに「本当はこういう物語だった」という、新たな解釈による脚色がトレンドだ。
グリム童話『白雪姫』をベースに、ジャンヌ・ダルクのように闘う白雪姫を描いた『スノーホワイト』(2012年)や、女同士のバトルを軸にコミカルなテイストで描いた『白雪姫と鏡の女王』(2012年)、イギリスの童話『ジャックと豆の木』と民話をベースにした『ジャックと天空の巨人』(2013年)など、映画では枚挙にいとまがない。
現在は、アンデルセンの『雪の女王』を大胆に脚色したディズニー・アニメーション映画『アナと雪の女王』が、世界各国で社会現象とも言うべきヒットの記録を更新中。7月5日には、ディズニー・アニメーションの名作『眠りの森の美女』に登場する魔女マレフィセントの視点から、まったく新たな解釈でオーロラ姫をめぐる物語を描いた『マレフィセント』が公開される。
いずれも、ロマンチックなファンタジーの要素以上に、ええっ、この話にはそういう見方もできるのか!? といった驚きや感動、それによって得られる教訓や真理が大人の心をも魅了している。
このブームは映画界だけのものではない。米国TV界でも近年、この手の大人が楽しめるダークなテイストの強いファンタジーは非常に人気が高い。その筆頭が、タイトルが表す常套句「むかしむかし~」で始まるおとぎ話の住人たち、白雪姫や赤ずきん、シンデレラにピノキオらが一同に会するドラマ『ワンス・アポン・ア・タイム』(2011年~)である。
物語は、2つの世界をパラレルワールドで描く形で進む。
おとぎの世界の魔法の森。白雪姫とチャーミング王子の結婚式に現れた、白雪姫の継母である悪い女王は、「ハッピーエンドは今日で最後」と言って呪いの魔法をかける。やがて、白雪姫とチャーミング王子が特別な方法で呪いから守ったわが子とわずかな者を除いて、ほとんどのおとぎの国の住人たちは現実世界に飛ばされ、過去の記憶を失い、普通の人間として暮らすことになる。
28年後、現代のメイン州にある海辺の小さな町、ストーリーブルック。何の変哲もない日常生活を送っているように見える人々が、実は呪いをかけられたおとぎの国の住人たちで、かつての記憶を失い時が止まったままのこの町にとらわれている。このストーリーブルックに、孤児として育った女性エマ・スワン(ジェニファー・モリソン)がやって来ることから、止まっていた時間は動き出す。
エマを町へ連れてきたのは、10年前にエマが出産し、里子に出して以来、会っていなかった息子ヘンリー(ジャレッド・S・ギルモア)。ストーリーブルックの市長レジーナ(ラナ・パリラ)の養子となっていたヘンリーは、ボストンにいる生みの母エマの元を訪れ、大きな絵本を見せて突拍子もないことを主張する。
そこに書かれている”おとぎ話”は実際の出来事で、自分の養母レジーナは悪い女王、学校のメアリー・マーガレット・ブランチャード先生(ジニファー・グッドウィン)は白雪姫、昏睡状態で病院にいる身元不明の男性(ジョシュ・ダラス)はチャーミング王子であり、この呪いを解くことができるのは白雪姫とチャーミング王子の娘であるエマしかいないというのだ。
ヘンリーの話は信じられないが、養母との折り合いが悪いヘンリーが心配で、町のホテルにとどまることにしたエマ。やがて、エマはヘンリーの話が真実である証拠を次々と目撃することになると同時に、おとぎの国で何が起きたのかが並行して描かれる。
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