白雪姫、赤ずきん…おとぎ話の裏バージョン 「めでたし、めでたし」では終わらない大人の寓話

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シンデレラ、不思議の国のアリスも登場

 

おとぎの世界も現代の物語も、いずれも基本的には「白雪姫」を軸としているが、ありとあらゆるおとぎ話が混在しているところが複雑で面白い。

おとぎの国には、『白雪姫』や『シンデレラ』『美女と野獣』『ピノキオ』『不思議の国のアリス』のほか、私たちがよく知る、または日本人にはあまりなじみのないさまざまなおとぎ話や童話の世界が同時に存在しており、彼らはそれぞれの物語を生きながらも、お互いに密接にかかわり合いを持っている。そして、各キャラクターの関係性や人生は現代の人間関係と呼応しているのだが、ここが一筋縄ではいかないところだ。

おとぎの国の住人が、現代でどんな姿をしているかはわからない。よって、『白雪姫』なら7人の小人は誰なのか、『赤ずきん』なら赤ずきんとおばあさんは誰なのか、『ピノキオ』ならゼペットじいさんとピノキオ、そしてコオロギは?……という具合に、ああ、あのキャラクターがこの人なのか!という驚きは遊び心もあって楽しい。

演じる俳優は、多くがひとり2役、おとぎの世界と現代のキャラクターの双方を演じており、そのギャップや相似性も心憎い。

だが、この作品を真に大人も楽しめるものにしているのは、視聴者の先入観を裏切る「本当はこういう話だった」という部分で、オリジナリティのある新解釈にあるだろう。

たとえば、『白雪姫』は王子のキスで目覚めてめでたしめでたし、では終わらない。それ以前にも、またその後にも、予想もつかない波瀾万丈、苦難の人生があるのだ。

そう、本作のベースにもなっているディズニー・アニメーション映画の名作の中で、とりわけ『リトル・マーメイド』以降、『美女と野獣』から『アナと雪の女王』などに登場するのは、自らの意志を持つ闘う強いヒロイン像であるように、本作のおとぎの国のヒロインたちもまた、それぞれに自らの力で人生を切り開き、幸せをつかもうとする現代的でリアルなキャラクターとなっている。男性のキャラクターも、またしかり。もっとも、ディズニー・アニメーションに比べれば、ずっと暗い面を持ち、大人の事情をたくさん抱えてはいるけれど。

よって、『ワンス・アポン・ア・タイム』はイマジネーション豊かなマジカル・ワールドで視聴者を楽しませてくれると同時に、冒頭で述べたように、童話やおとぎ話から得られる教訓、深読みできる真理がぎっしり詰まっている大人のための寓話とも言えるのだ。

白馬に乗った王子様が、お姫様を助けにきて唐突に恋に落ちたりしないし、俗に言う“運命の恋人たち”にもちゃんとバックグラウンドがあれば、その後の生活の苦労がある。

一方、完全なる悪役に見えても、なぜそういう人格形成に至ったのかといった過程には、見た目からはわからない苦悩や、誰しも可能性のあるたった一度の過ちによる因果があったりする。

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