大森南朋のナギサさんが支持される納得の理由 熱演の陰にある等身大のサクセスストーリー
これまで1000人を超える俳優にインタビューしてきましたが、経験豊富なベテランほど、「力まない、気負わない、頑張ろうとしすぎない」ことを心がけているようでした。
見ている人に俳優の緊張感や作為が伝わってしまうのは絶対にダメで、「そのシチュエーションの中にたたずんでいるだけで何かを感じてもらいたい」と思っている人が多かったのです。そんな姿勢は、まさに大森さんそのもの。経験豊富なベテランが目指す境地を長年追求してきたことが、演技の説得力を生んでいるのでしょう。
この姿勢はビジネスパーソンにも参考になるところがあります。例えば、管理職になると、部下や取引先に自分ができる人間であることを見せようとしがちですが、そんなときに力んだり、気負ったりしていると思われてしまうと説得力がありません。大森さんのようにわかりやすい言葉(セリフ)に頼るのではなく、そこにたたずんでいるだけで、できる人間と感じさせることがビジネスパーソンの目指すべき姿でしょう。
スタート地点が低くても成功できる
現在ではドラマ、映画、舞台などに引く手あまたの大森さんも、俳優業だけで生活していけるようになったのは30代に入ってから。もともとバンド活動をしていて、俳優業に挑戦し始めたのは25歳のころという遅咲きなのです。
意外なことに大森さんは、演技の仕事を熱烈に求めていたわけではなく、舞踏家で俳優の父親・麿赤兒さんに勧められてオーディションに挑戦。しかし、「音楽と同じ人前で表現する仕事だから」という気軽な気持ちで始め、演技の勉強や稽古の経験もなかったため、当然うまく演じることはできませんでした。
苦しい状況の中、大森さんは「何とか認められよう」ともがき続け、一方で生活のためにアルバイトをするなど雌伏(しふく)の時を過ごしていたのです。
つまり、「現在の仕事を始めたころは、経験やスキルどころかモチベーションすらあいまいだった」ということ。ビジネスパーソンの中にも、同じような状態だった人が多いのではないでしょうか。大森さんは「目の前の仕事に向き合うしかない」という思いで励み、評価を得た現在では「現場で育ててもらった」という感謝の気持ちを抱いていると聞きました。
「スタート地点は低く、雌伏の時を過ごしていても、目の前の仕事に励み続けることで成功のチャンスと出会い、それを継続していくために感謝の気持ちを忘れない」という等身大のサクセスストーリーを体現しているのです。これは俳優業に限らず、どんな業種にも共通して参考にできる姿勢でしょう。
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