大森南朋のナギサさんが支持される納得の理由 熱演の陰にある等身大のサクセスストーリー

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父親の麿赤兒さんは日本を代表する舞踏家であり、77歳の現在も現役として暗黒舞踏を続けているほか、俳優としてドラマや映画などの映像作品にも出演。大森さんはそんな父親の舞台を見て育ち、今なおすごさを体感し続けています。

また、兄の大森立嗣さんは『さよなら渓谷』『セトウツミ』『光』『日日是好日』『MOTHER マザー』などを手がけた映画監督。大森さんは子どものころ仲が悪かった兄が自主映画を作り始め、さまざまな現場で経験を積み、日本を代表する監督の1人に登り詰めていく過程を間近で見ていたのです。

こう書くと華やかな芸能一家のように思われるかもしれませんが、父親が暗黒舞踏に人生を賭けていたこともあり、大森さんはこれまで何度か「裕福な家庭ではなかった」「ほかの二世俳優と違うと思う」などと語ってきました。父親も兄弟も、そろってたたき上げの成功者という共通点があるのです。

加えて2012年に結婚した妻は女優の小野ゆり子さん。小野さんも10代のころから下積みを重ねたたたき上げの女優であり、17歳年上の夫・大森南朋さんに刺激を与えられる存在なのでしょう。

私たちが大森さんの演技に魅了されるのは、そんなたくましい家族から刺激を受け続けているからなのかもしれません。家族が難しかったとしても、「身近な人々から刺激を受けることがいかに大切か」がわかるのではないでしょうか。

「ナギサさん」に宿る人間性と生き様

最後に話を「私の家政夫ナギサさん」に戻すと、大森さん自身、公式ホームページで「50歳手前で『ついにラブコメ!』と思いました」とコメントしていました。しかし、視聴者から見たら22歳年下女性とのラブストーリーであるにもかかわらず、大森さんの演じるナギサにまったく違和感はありません。

また、大森さんはふだん掃除はするものの、料理はほとんどしないため、新たな挑戦となっているようです。周囲から見たら十分な評価を得た現在も新たな挑戦を続け、しかも「(家事の技術は)自宅でも活用できるなと思いながら教わっています」「エプロンはあまり着けないので新鮮です」などと楽しんでいました。

「年齢を重ねても新しいことに挑戦する」「同時にそんな自分を楽しむ」。だからこそ大森さんは慢心どころか謙虚さを忘れることなく、スキルを高め、実績を積み重ねていけるのでしょう。多くの視聴者がナギサに惹かれるのは、大森さんの演技がうまいからだけでなく、その人間性や生き様が役に宿っているからなのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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