大森南朋のナギサさんが支持される納得の理由 熱演の陰にある等身大のサクセスストーリー
そのことをある撮影の合間に伝えると大森さんは苦笑いしながらも、「いつも役に立たないようなことばかり話していますが、それも無駄なことではないと思っているんですよね」と返してくれました。大森さんにしてみれば、「グチや不満だらけの演技談義も、酔っ払った先輩の説教も、それを楽しみながら刺激にすることで、モチベーションにつなげている」ということではないでしょうか。
さらにもう1つ、大森さんがモチベーションキープの原動力にしているのが音楽活動です。
かつて挫折した音楽を再開できる自由
前述したとおり、大森さんは俳優業をはじめる前にバンド活動をしていました。当時はなかなか評価を得られず、お金もなく、将来の見えない苦しい日々。そこで俳優業に軸足を移し、苦労の末に現在の成功を勝ち取ったのですが、大森さんは中途半端な形で音楽をやめたことが心に残り、「40代に入ったらまた音楽をやりたい」と思いながら曲作りを続けていたそうです。
実際、大森さんは2015年にロックバンド「月に吠える。」の活動をスタート。「売れよう」と意気込みすぎるのではなく、趣味の延長線上というスタンスでライブやリリース活動をしています。若いころの挫折をただの苦い過去で終わらせてしまうか、40代以降のセカンドチャンスを虎視眈々と狙うか。どちらが充実した人生であるかは説明不要でしょう。
大森さんは演技というお金を稼げる軸足があるから、自由に動かせるもう1つの足で音楽ができる。これは裏を返せば、「軸足を保ったまま、もう1つの足を動かせる範囲の自由」ということ。自分の努力で得られた身の丈に合う自由を音楽に使っているのです。
しかもいい意味で演技と音楽は似ているように見えて、まったくの別物でした。演技は自分の感情と向き合うもので、音楽は他人に感情を伝えるもの。演技はプロデューサーや監督の意図を踏まえて表現するもので、音楽は自分の意図で表現するもの。大森さんはこのように大きく異なるものを両立させることで、それぞれの分野に好影響を与え、さらに心のバランスがうまく取れるのでしょう。
これをビジネスパーソンに置き換えると、「会社など組織の一員としての自分を軸足にしつつ、もう1つの足で副業、社会活動、趣味などを自由に楽しめばいい」ということ。「やりたいことをすべて自由にやる」のではなく、「やるべきことをやって得られる自由を楽しむ」という現実的かつ生産性の高いスタンスなのです。
このようないい意味で割り切ったスタンスが取れるのは、大森さんは音楽での挫折や下積み時代など過去の経験を生かしているからでしょう。それと同時に、大森南朋という人物を掘り下げるうえで忘れてはいけないのが家族の存在です。
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