オリエンタルランド「ベンチャー投資」の意外感 舞浜一極集中の危機感から自社ファンドで参入

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東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドがベンチャー投資に打って出ている(写真:ロイター/アフロ)

企業によるベンチャー企業への投資に、冷や水を浴びせることになったコロナショック。とくに事業会社が自己資金でファンドを組成して、主に未上場の新興企業(ベンチャー企業)に出資や支援を行うコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)においては、「オープンイノベーション」を合言葉に新規事業の育成、既存事業とのシナジー追求などが図られてきたが、コロナ禍で本業の基盤が揺らぎかねない今、その動きにも減速感が見られている。

『週刊東洋経済』8月17日発売号では、「すごいベンチャー100」を特集。コロナ禍で多くの企業が新常態に合わせた事業戦略の見直しを迫られる中、その流れをとらえ成長を加速する本当に強いベンチャー企業100社を選出し、総力取材している。

過去5年間で国内ベンチャー市場の資金調達額は3倍近くに膨らみ、活況を呈してきた。調査会社INITIALによると、2019年の国内ベンチャー企業の資金調達額は4462億円と過去最高額を更新している。中でも、専業ベンチャーキャピタル(VC)ではない事業会社による直接投資は約3割を占めており、ベンチャー各社にとってはCVCによる投資も有力な資金源だった。

コロナが誘発した「バブル崩壊」

だが2020年に入り、状況は一変する。一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの調査(直近四半期投資動向調査、2020年1~3月、100社が対象)によれば、この間の国内向けベンチャー投資金額は387.4億円。前年同期比で約20%減、直前3カ月(2019年10~12月)比では約30%減少した。足元の4~6月期についても減少トレンドが続いているとみられる。

今回の特集取材を通しても、事業会社やCVCの投資動向について、「コロナ感染拡大で春先には投資実行の検討が一時先送りされ、そのままストップした事例もある」「今は事業会社に出資の相談を持っていくこと自体が時間のムダだと感じている」などと話すベンチャー関係者も相次いだ。

実際、大企業側へのアンケートを見ても、投資意欲の低下は明らかだ。デロイト トーマツ ベンチャーサポートが今年5月に公表した調査(事業会社272社を含む324社が対象)によれば、50%を超える大企業がベンチャーとの協業を含めたイノベーション活動を2019年比で3割以上減少させる見込みとしている。また、昨年に比べて投資額を減らすと回答したCVCは約9割に達した。

景気が安定し、多くの大企業で「金余り」が顕著になっていたこの数年、ベンチャー企業に大企業からの投資マネーが流れ込んだ。その裏では「ベンチャー投資バブルになっている」と懸念する声も少なくなかった。「弾けるのは時間の問題だった。新型コロナはきっかけにすぎない」(あるベンチャー経営者)。

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