オリエンタルランド「ベンチャー投資」の意外感 舞浜一極集中の危機感から自社ファンドで参入

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豊福力也(とよふく・りきや)/2004年に新卒でオリエンタルランド入社。人事部、OLC出資先ベンチャーへの出向、グループ会社管理、自社農園の立ち上げなどを経験し、経営戦略部を経てオリエンタルランド・イノベーションズを設立。東京大学法学部卒、テキサス大学オースチン校経営大学院修士課程修了(MBA)(写真:オリエンタルランド)

テーマの1つである学び領域は地域を問わず展開可能だ。舞浜にある2つのディズニーテーマパーク事業への一極集中リスクを軽減することにもつながる。CVC設立から2カ月余り。現在はどの領域に最初に取り組んでいくのか、調査や分析をしている状況だが、4つの事業領域へのアプローチについては明確なイメージを持っている。

「出資とひとくちに言っても、人事領域と学び支援の事業に関しては、(新規性のある手法やアイデアを持つ)シードステージ(創業期)やアーリーステージ(成長期)の企業とイチから生み出していくというのを前提に考えている。一方、スマートシティ・省エネなど社会的課題の解決については、すでにプロダクトの実績があるレイターステージ(成熟期)の企業や他の大企業との合弁会社を作るということも考えられる」(豊福社長)

設立後の反響も大きい。設立から1カ月で200件以上の出資・連携希望の問い合わせがあった。ベンチャー企業からはもちろん、VCや金融機関からのアプローチも少なくなく、1件1件精査しているという。

危機下こそ問われるCVCの底力

オリエンタルランドの事例のように、事業環境が悪化したときにこそ、ポートフォリオ強化のためにCVCがベンチャー投資に踏み切る意義は大きい。また、企業が短期的な目線で投資の実行・引き揚げを判断するのではなく中長期的にコミットし続けることは、ベンチャー市場のエコシステムを育成する意味でも重要だ。

前出のデロイトトーマツベンチャーサポートのアンケート調査では、事業会社におけるイノベーション活動・ベンチャー協業を推進するうえでの最大の課題は、 「本業への影響」「予算の凍結」であると分析されている。

今回のコロナ危機のようなタイミングで、いったん投資から手を引き、また回復してから投資を再開するというやり方では、ベンチャー企業からの信頼を得られにくく、新規事業の創出も難しい。親会社から切り離す形でCVCを設立したのであれば、親会社からの独立性や投資権限を持つことが本来の存在意義であるともいえる。

「もちろん親会社の業績と連動する部分があるが、出資判断はCVCとして行い、投資をやめてしまうということは考えていない」(豊福社長)

過去を振り返れば、日本のCVCには景気後退時に投資判断を見送り、投資をやめてしまう事例は多くあった。だが、今回特集内で紹介しているとおり、本当に強いベンチャーは不況期にこそ成長している。日本のベンチャー市場の有力な資金源であったCVCにおいても、ピンチをチャンスに変えられる力が求められている。

『週刊東洋経済』8月22日号(8月17日発売)の特集は「すごいベンチャー100 2020年最新版」です。
菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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