ほんの少しのビジネス的発想で、村に変化を起こす
澤田隊員が話を聞いてみると、その家族は、砂漠の中の給水塔のふもとで小売店を営んでいました。給水塔は、地下水をくみ上げるための施設で、西アフリカの乾燥地帯に点在します。ここには、遊牧民族たちが、家畜に水をやるために訪れます。
家畜に水を飲ませている間、遊牧民族たちはやることがないので、小売店でタバコや食べ物を買って時間をつぶすのです(そして、前述したとおり、彼ら遊牧民族はおカネを持っています)。そういった消費のおかげで、この小売店は儲かっていて、その儲けで、家族は野菜を買って食べていたのでした。
それを見た澤田隊員は、野菜を育てることも重要だけれど、野菜の流通経路を工夫することも大事だ、という考えに至ります。そこで、彼女は、ほかの村人たちにも、給水塔のふもとで商売をやることを提案しました。また、給水塔小売店が儲かると、野菜を近隣の町から取り寄せて売ってもらうことにしました。こうやって、商売で豊かになった村人が、野菜を安定的に供給するようになり、村全体の野菜摂取量が上がっていったのです。
教育分野の隊員たちも活躍しています。ケニアの小学校で、理数科教師として働く伏見真彦隊員は、月額ほんの100円ほどの授業料を払えないために、学校に来られなくなってしまう子供がいることに心を痛めていました。ところが、あるとき、授業参観に来たある親から、「授業料支払いまでに、もう少し時間があれば……」という声を耳にします。
そこで、伏見隊員は、授業料納入日の1週間前に、学校からの授業料支払いをお願いする手紙を子供たちに持って帰らせました。とても小さな第一歩のようですが、この手紙によって、なんと、ほぼすべての家庭が締め切りまでに授業料を納入してきたのです。
親たちは忙しく、普段、授業料納入期限の話を子どもからきちんと聞いていなかったようでした。1週間の余裕があれば、期日に向けて少しずつお金を貯めることができます。またケニアは手紙を重んじる文化なので、学校からの正式な手紙、というのは親を本気にさせるうえで効果があったのだそうです。
同じテーマでも、国によって有効なアプローチが違います。セネガルの教育隊員の藤本めぐみさんは、村人の1年を通しての収入のトレンドに着目し、遊牧民族がイスラム教の祭りで羊を売却し、余剰資金がある時期にあわせて、文房具販売のキャンペーンを行いました。この結果、生徒全員が文房具をそろえることを可能にし、学習環境が改善したそうです。
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