日本産業パートナーズ、再編担う黒子の正体

大手企業の事業再編で活躍、その強さの秘密は?

主要株主がみずほ証券のため、みずほグループ系の投資ファンドとして報じられることも多い。だが、設立の経緯からもわかるように、もとから“独立色”が強かったといえる。当初、みずほグループの出資比率は約30%だったが、12年3月期に同グループの関連会社から外れ、現在の出資比率は10%台に低下。ほかの大株主は10%強を保有するNTTデータ。残りの約70%は役職員による自社の持ち株会で保有している。

設立当初のメンバーはわずか5人。馬上氏自身、ファンドの運営の経験がほとんどなく、カネ集めに苦労した。興銀時代のツテをたどり、02年12月に総額83億円の第1号ファンドを組成し、投資期間は最長8年程度、目標リターンを最低2倍に設定。年間約100件の投資案件を検討し、2、3件まで厳選したうえで資金を投下した。

一般的にファンド運営では複数企業への投資でリスクを分散する。JIPの1号ファンドでそれをすると可能な買収額は20億~30億円がやっと。投資案件が小粒で、つい最近までファンド業界でも地味な存在にとどまっていた。

馬上氏は、「まずは自分の投資仮説がうまくいくかどうかを検証してみたかった」と、下積み時代を振り返る。そして、念願のカーブアウト第1号案件となったのは04年、NECからのレーザー加工機事業の買収だった。

期待通りのリターンを確保

当時のNECは情報システム畑の社長の下、メーカーからITサービスへの事業転換を急ピッチで進めていた。レーザー加工機の製造はノンコアと見なされ「儲からず、これ以上の開発負担を抱えきれないため、売却対象となった」(NEC幹部)。とはいえ、市場での競争力は高かった。特に液晶ディスプレーのリペア用レーザー装置では5割の世界シェアを持つほどだった。

買収後、JIPが新社長として送り込んだのは、米半導体装置大手の副社長を務めた経験を持つ高島寛氏。その高島氏は、「私に与えられたミッションは、社員のモチベーションを高め、事業の成長を図ることだった」と当時を振り返る。社長に就いてから、高度な技術力がある一方で手薄になっていたマーケティング組織を拡充。NECの方針で抑制されていた開発費を増やし、さらなる製品力の強化を図った。各地に分散していた事業拠点の統廃合などコストの削減も行った。ただし、「人員削減や事業の切り売りなどは、従業員のやる気をそいでしまうのでやらなかった」(高島氏)。

この点はNECが最も懸念していたことだった。売却先のファンドが手荒なリストラを行えば、切り離したNECも社会的な批判にさらされる懸念があったからだ。だが、JIPが事業の拡大を目指す姿勢を崩さなかったため、「極めてまっとうなファンドだという印象を持った」(前出のNEC幹部)。

結局、レーザー加工機事業を手掛けるこの会社は3年間保有した末、07年にオムロンへ売却した。売却額は不明だが、「期待どおり」(馬上氏)というように、最低限の目標リターンとしている2倍はクリアしたようだ。

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